明けましておめでとうございます。
一年の計は元旦にあり、と言います。今年が良い年になるよう、お正月から良いスタートを切りたいですよね。小説においても初めの一文は重要で、良い書き出しはいきなりその世界観へと引き込んでくれます。
というわけで、新年一発目のテーマは『書き出し』です。
今月は、特に有名な書き出しに注目して読んできました。
〇書き出し
吾輩は猫である。 ・・・
私はその人を常に先生と呼んでいた。・・・
親譲りの無鉄砲で小供のときから損ばかりしている。・・・
4冊目.『檸檬』紹介 - 本をめぐる冒険
えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。・・・
ある日の事でございます。・・・
6冊目.『鼻』紹介 - 本をめぐる冒険
禅智内供の鼻と云えば、池の尾で知らない者はない。・・・
ある日の暮方の事である。・・・
メロスは激怒した。・・・
9冊目.『桜桃』紹介 - 本をめぐる冒険
子供より親が大事、と思いたい。・・・
10冊目.『人間失格』紹介 - 本をめぐる冒険
私は、その男の写真を三葉、見たことがある。・・・
11冊目.『舞姫』紹介 - 本をめぐる冒険
石炭をば早や積み果てつ。・・・
12冊目.『蟹工船』紹介 - 本をめぐる冒険
「おい地獄さ行ぐんだで!」・・・
13冊目.『雪国』紹介 - 本をめぐる冒険
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。・・・
〇感想
書き出しの巧いというのは、その作者の「親切」であります。
太宰治『女の決闘』
漱石に芥川、太宰に川端康成。有名な書き出しを集めてみたら、当然ながら文豪たちの作品ばかりになりました。今回、名文と呼ばれる書き出しを自分なりに分析すると、一つの共通点がありました。それは、非常に論理的な文章構成であるということでした。まず一文目はすべて短い一文になっています。ここは「つかみ」としての意味合いが大きく、シンプルかつ特徴的な言葉で読者の興味を惹きつけます。正直、一文目だけでは状況がよく分からないことが多かった気がします。具体的な情報は二の次で、抽象的な短文で作品の雰囲気を作っておく、といった印象でした。そして、細かな説明はその後に続く文章で付け加えられていきます。つかみがしっかりしていると、そのあとに続く情報もすんなりと入って来るようになります。論理的な説明がうまい人は、よくこういった話し方をしますよね。抽象⇒具体化という構成は、今回読んできたどの作品にも当てはまっていました。一般に感性が必要と思われる小説ですが、いい文章には論理的な構造が必要になるようです。翻って自分の書いた記事を改めて見ると、ついつい長い文章を書いてしまっているのが分かってしまい、恥ずかしい限りです。
また、今回は内容や文章の感想だけでなく、当時の情勢や文化を今から見たらという観点でも読んでみました。古典作品は私たちが生まれるずっと前から読み継がれていて、感想もすでに出尽くしています。そこで、少し変わったことに挑戦してみました。うまくいったかは分かりませんが、今とは時代が違って退屈に感じる古典小説も、あえて現代と比べてみることで分かることがあるかもしれません。
ここまで読んでくださってありがとうございました。