本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『和算の侍』紹介

 こんにちは。

 皆さんは「数学」と聞くと、何を思い浮かべますか?多くの人が抽象的で難しいと考える一方、他にはない論理的な純粋さや美しさを感じる人もいたりと、結構好き嫌いが分かれる分野です。また、一般的には小説のような文学とは対極にあるイメージだと思います。ですが、数学を題材とした本というのも実は数多く書かれています。

 というわけで、8月のテーマは『数学』です。

 さて今回は、鳴海風さんの『和算の侍』を紹介します。和算に関わった実在の人物たちを主人公とした、短編歴史小説になります。

 

 

〇あらすじ

 建部賢弘は、関孝和に算術の師としての接し方について不満をぶつけるが相手にされなかった。複雑な計算を根性で行う賢弘に対し、孝和は全く新しい解法を求めようとしていたことに驚く。賢弘は闘志を燃やすが、同僚の間で孝和を陥れようとする動きがあることを知る。(『円周率を計算した男』)

 

〇数学と物語と

 鎖国中の江戸時代、和算と呼ばれる日本独自の数学が発展し、中には西洋に先んじていた部分もありました。本書では、あまり知られていない「和算の侍」たちにスポットが当てられています。

 『円周率を計算した男』では、関孝和の弟子である建部賢弘が円周率を正確に求めようと奮闘する話です。当時の円周率の求め方は、円に内接する多角形の辺の長さを求める方法で、多角形の辺を細かくしていくことで円周の長さに近づけていこうとするものでした。7万角形のような途方もない細かさにはどこか執念のようなものを感じます。しかしその方法では円周の近似値を求めることはできても、いつまで経っても円周率の真の値を知ることはできませんでした。孝和に冷たくそのことを指摘され、賢弘は衝撃を受けつつも反発します。その後、閃きを重視する感覚派の孝和に対し、賢弘は愚直なまでの努力によってついに円理にたどり着きます。算数の授業で何気なく習う3.14には、何人もの天才たちの執念が込められていました。

 賢弘が円理にたどり着くまでには、妻の春香の助けが不可欠でした。本書の他の短編に登場する算術家たちも、妻や恋人に支えてもらいながら和算の研究に打ち込みました。男尊女卑の江戸時代という時代背景もありますが、孤独を感じることが多い数学の研究には、共に支え合っていく誰かが必要なのかもしれませんね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

『若き数学者のアメリカ』紹介

 こんにちは。

 皆さんは「数学」と聞くと、何を思い浮かべますか?多くの人が抽象的で難しいと考える一方、他にはない論理的な純粋さや美しさを感じる人もいたりと、結構好き嫌いが分かれる分野です。また、一般的には小説のような文学とは対極にあるイメージだと思います。ですが、数学を題材とした本というのも実は数多く書かれています。

 というわけで、8月のテーマは『数学』です。

 さて今回は、藤原正彦さんの『若き数学者のアメリ』を紹介します。数学者である藤原さんがアメリカに渡ったときの経験を綴ったエッセイです。数学3割・海外体験7割といった感じでした。

 

 

〇あらすじ

 初めてのアメリカで孤独を感じた私は、数学で奮闘するしか道はないと感じる。招聘されたミシガン大学では必死で準備した講演がめでたく高評価を受ける。しかしそこで燃え尽きてしまい、その後の身の振り方に悩む。さらにはミシガンの長く過酷な冬も加わって、ノイローゼとホームシックに苦しむことになるのだった。

 

〇数学と物語と

 本書はどちらかと言えば、数学的な話よりも海外体験記がメインとなっています。

 最初はミシガンへ行く前にハワイやラスベガスを見て回ります。真珠湾に行って周囲の人からありもしない敵意を感じたり、カジノで景気づけとばかりに散財したりと、ユーモラスな表現の中にどこか不安を感じてしまいます。それらは海外を過剰に意識していることの裏返しでした。さらに読んでいくと、藤原さんの負けん気が強さが伝わってきますが、講演の成功を機に燃え尽きてしまい、孤独の中でついにはノイローゼにまでなってしまいます。少し失礼な表現かもしれませんが、本来は優秀な数学者である筆者の人間臭い部分が垣間見えて面白く感じました。そこからいろいろな出会いを経てメンタル的に復帰していくところは、本書の見どころの一つです。特に、とある浜辺での少女との出会いは、映画みたいで美しいシーンでした。

 後半は、アメリカの教育環境や日本との比較についての考察が書かれており、こちらも興味深いになっています。大学に入ってから頑張るアメリカと、大学入学で燃え尽きてしまう日本の違いや、議論に強いアメリカ人と知識が豊富な日本人の違いは、今でもよく聞く話ですが、筆者の実体験が詳しく書かれているので説得力を感じました。また、海外でのアイデンティティの保ち方についての考察も興味深かったです。筆者曰く、変にアメリカに馴染もうとするのではなくて、あえて日本人として振舞った方が受け入れられやすいそうで、こちらも実感がこもっていてなるほどと思いました。自然体でいる方が自分にとっても相手にとっても良い、そう分かっていても難しそうですが。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

『フェルマーの最終定理』紹介

 こんにちは。

 皆さんは「数学」と聞くと、何を思い浮かべますか?多くの人が抽象的で難しいと考える一方、他にはない論理的な純粋さや美しさを感じる人もいたりと、結構好き嫌いが分かれる分野です。また、一般的には小説のような文学とは対極にあるイメージだと思います。ですが、数学を題材とした本というのも実は数多く書かれています。

 というわけで、8月のテーマは『数学』です。

 さて今回は、サイモン・シンさんの『フェルマーの最終定理』を紹介します。300年以上も解けなかった数学史上最も有名な難問が証明されるまでの物語が、ドキュメンタリー風に紹介されています。

 

 

〇あらすじ

「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」

 17世紀にフェルマーが残した問題は、数多くの数学者たちを悩ませると同時に、数学そのものを発展させてきた。この魅力的な難問が1993年の夏にアンドリュー・ワイルズによって証明されるまでには、時代を超えた数々のドラマがあった。

 

〇数学と物語と

 フェルマーの最終定理とは

3以上の自然数nについて、xn + yn = zn を満たすような自然数の組x,y,zは存在しない

 という命題を証明、もしくは反証せよ、というものです。一見シンプルに見えますが、実はこれが300年以上も数学者たちを悩ませてきた難問でした。本書では、その証明に至るまでが時系列を追って紹介されています。

 始まりは、三平方の定理で有名なピュタゴラスが活躍した古代ギリシャからです。ピュタゴラスの凄さは、初めて「証明」をすることで三平方の定理の正しさを示したことでした。それは主観なしの真理を手に入れたことを意味しました。実は、三平方の定理を「2乗」から「3乗以上」に変えたものがフェルマーの最終定理になっています。

 時代が下って中世になると、ヨーロッパの数学は暗黒時代に入ります。しばらく後、ニュートンが科学に数学を用いたことから、再び数学に目が向けられるようになりました。ここでようやくフェルマーの登場です。彼はかなりの秘密主義者で、他の数学者を挑発することもあったと言います。フェルマーの最終定理も『算術』という書物の余白に書き残したもので、それが後世の数学者たちへの挑戦になっていきます。

 その後、オイラーやソフィー・ジェルマン、コーシー、ラメ、クンマー、ヒルベルトラッセル、ゲーテル、チューリング、谷山豊、志村五郎といった数学者たちがその証明に挑み、少しずつ前進しては壁に当たってを繰り返すことになります。たとえ証明には至らなくても、新しい数学の一分野として発展していきました。数学的な証明の部分は正直難しかったですが、彼らにはそれぞれの人間ドラマがあって、そのお陰で飽きずに最後まで読むことができました。女性が数学を学べない時代に男のふりをして学校に通ったり、自殺する直前にフェルマーの最終定理の証明を見て思いとどまったりといったエピソードが印象に残っています。生まれた時代も国もバラバラな彼らが、フェルマーの最終定理という一つの問題を通して繋がっているというのも不思議な感じです。数学が世界共通言語と呼ばれるのも納得ですね。

 そして最後にバトンを受け取ったワイルズは、7年間もたった一人で研究を続けたそうです。現代の数学では共同研究が当たり前である中、彼は自分の進んでいる道が正しいのかも分からずに孤独に戦い続けました。ダミーとして別の研究をちょっとずつ小出しに発表することで、自分がフェルマーの最終定理に取り組んでいることを隠していたくらい、徹底して秘密主義を貫いていたと言います。最終的に証明したのが、フェルマーと同じ秘密主義者だったというのも不思議な話ですね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

『天地明察』紹介

 こんにちは。

 皆さんは「数学」と聞くと、何を思い浮かべますか?結構好き嫌いが分かれる分野で、いわゆる文学とは対極にあるイメージだと思います。ですが、数学を題材とした小説も実はたくさん書かれています。というわけで、8月のテーマは『数学』です。

 今回は、冲方丁さんの『天地明察』を紹介します。第7回本屋大賞受賞作で、岡田准一さん主演で映画もヒットしました。

 

 

〇あらすじ

 数学を志す春海は、算額奉納された絵馬の問題を瞬時に解いたという関孝和という人物に驚く。本業である碁の指導に向かうと、老中の酒井から「退屈ではない勝負が望みか」と問われる。その問いに対し、春海は迷わず「はい」と答えるのだった。関に対しても全身全霊を懸けた問いを出すが、それは解答不能の問題だった。後悔に苦悶する春海だったが、えんに背中を押され、改暦という大事業に挑むことになる。

 

〇数学と物語と

 本作の主人公は渋川春海という実在の人物です。もともと将軍家に碁を教える碁方の家に生まれ、別名である安井算哲は父から受け継いだ名前でした。数学や天文学にも通じており、日本史的にもそれまでの宣明暦から、中国の授時暦を取り入れた貞享暦への改暦を進めた人物として知られています。本作では春海が窮屈な御城碁に退屈を感じており、数学や天文学に惹かれていく様子が描かれています。

 本作には主に伝聞という形でしか登場しませんが、関孝和というのも歴史上の人物です。当時の日本の数学である和算を大きく発展させた人物で、円周率を小数第11位まで正確に求めたり、ベルヌーイ数をヤコブ・ベルヌーイよりも少し早く発見したという逸話があります。

 また、テレビドラマ「水戸黄門」で有名な徳川光圀も登場します。落ち着いたおじいちゃんのイメージとは裏腹に、実際は若い頃は荒くれ者で、ラーメンやワインが好きという風変わりな人物だったそうです。春海は関や光圀はじめ、関わってきた多くの人々に認められ、改暦という大事業に挑むことになります。

 普段は意識しませんが、今日が何月何日であるのかを知ることができるのは暦があるからです。特に昔は日食は不吉なものと考えられており、日食を予測することはとても重要でした。今では、日食は数少ない一般的な天体イベントになっていますね。それくらい、我々は何の疑いもなく暦というものを受け入れていることに気が付きます。暦を決めるのは権威の象徴でもあり、だからこそ既得権益を壊してしまう改暦は一大事業でした。誰もやったことのない難題に挑んでいく緊張感や高揚感が、本作の見どころとなっています。

 さて、ここで数学ですが、本作には和算の問題が何問か登場します。例えば、関孝和が瞬殺した問題に、下図の内接円の直径を求めるという問題がありました。

冲方丁天地明察』より)

 直角三角形に内接する円のような問題は、和算では容術と呼ばれて頻繁に出題されたみたいです。他にも天文学にちなんだ問題なども載っているので、数学の腕に自信のある方は、腕試しとして挑戦してみるのも面白いかもしれませんね。もし解けたら「明察」ということになります。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

『容疑者Xの献身』紹介

 こんにちは。

 皆さんは「数学」と聞くと、何を思い浮かべますか?多くの人が抽象的で難しいと考える一方、他にはない論理的な純粋さや美しさを感じる人もいたりと、結構好き嫌いが分かれる分野です。また、一般的には小説のような文学とは対極にあるイメージだと思います。ですが、数学を題材とした本というのも実は数多く書かれています。

 というわけで、8月のテーマは『数学』です。

 さて今回は、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』を紹介します。「ガリレオ」シリーズ初の長編で直木賞受賞作、映画も大ヒットしました。ミステリーなので特にネタバレに注意して書きたいと思います。

 

 

〇あらすじ

 弁当屋で働く靖子は、しつこく付きまとってきた元夫を娘と一緒に殺してしまう。死体を前に呆然とする二人のもとを訪ねてきたのは、隣部屋に住む高校教師の石神だった。何もなかったと言って帰そうとする靖子に、石神は「女性には死体の処分は不可能です」と言い、死体の処理を任せてほしいと申し出る。一方、事件を捜査していた草薙は物理学者の湯川の元を訪れた。湯川と石神は同じ大学の同窓生でもあった。

 

〇数学と物語と

 本作の見どころは何といっても肝となるトリックの素晴らしさです。本作は靖子が元夫を殺すシーンから始まり、探偵役の湯川視点と靖子や石神の視点が交互に出てくるいわゆる倒叙ミステリーの形式を取っています。読者としては犯人も分かっているし、犯行シーンも見たにも関わらず、なんとなく微妙な違和感を抱えたまま読み進めていくことになります。そして、実は最後に読者を欺くトリックが仕組まれています。その鮮やかさはこれまで読んできたミステリーの中でも1,2を争うくらいでした。ネタバレなしに説明することは難しいのですが、「いいからとにかく読んで!」と言いたくなる作品でした。

 では数学の話をしましょう。本作に登場する数学は主に2つです。一つは「四色問題」。石神が大学時代に取り組んでいたという問題で、本作のテーマにもなっている難問です。簡単に説明すると、「隣り合う部分を違う色で塗っていったときに、すべての地図が4色で塗分けられるかどうか」という問題になります。まるで小学生の塗り絵のような、一見すると数学の難問らしからぬ変わった問題ですね。数学科ではない人間の素朴な質問から多くの数学者が挑むことになり、難問とみなされるようになったという経緯も変わっています。実はこの問題、すでにコンピュータによる証明がなされています。これを美しくないとして別の証明に挑んでいたのが大学時代の石神でした。

 もう一つは「P≠NP予想」。本作では「誰にも解けない問題を作ることとそれを解くことはどちらが難しいか」という形で引用されています。つまり、真犯人を隠そうとする石神と謎を解こうとする湯川の関係を象徴するような問題というわけです。数学的にはどうやって解くのか全く分からない難問ですが、こちらも数学的な要素がストーリーにぴったり当てはまっています。ちなみにこの問題はミレニアム懸賞問題の一つでしかもまだ未解決、証明できれば100万ドルの大金がもらえるそうです。

 また、頭の中で考えて最適解を見つけ出す石神と、仮説を立てて実験を繰り返すことで確かめていく湯川とで考え方が異なるのもなるほどと思いました。数学と物理学におけるアプローチの違いが、そのまま犯罪に対するスタンスの違いにもなっていました。著者の東野圭吾さん自身も工学部出身で、専業作家になるまでは技術者として働いていたそうです。ガリレオシリーズにはそのときの経験が活かされているみたいです。ひょっとしたら石神のような同期がいたのかも?と想像してみても面白そうですね。

 ちなみに、ドラマ版や映画版では柴咲コウさん演じる内海が湯川に協力を仰ぐ刑事として活躍していますが、原作では草薙が主にその役割を果たしています。男女の違いのためなのか、湯川と草薙(内海)との間の意見の相違も、原作と映画とでは少し違って見えます。さらに映画では、石神が湯川を誘って雪山登山に向かうというシーンが追加されています。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

『博士の愛した数式』紹介

 こんにちは。

 皆さんは「数学」と聞くと、何を思い浮かべますか?多くの人が抽象的で難しいと考える一方、他にはない論理的な純粋さや美しさを感じる人もいたりと、結構好き嫌いが分かれる分野です。また、一般的には小説のような文学とは対極にあるイメージだと思います。ですが、数学を題材とした本というのも実は数多く書かれています。

 というわけで、8月のテーマは『数学』です。

 さて今回は、小川洋子さんの『博士の愛した数式』を紹介します。第1回目の本屋大賞受賞作で、映画もヒットした有名作ですね。逆に解説が難しい・・・。

 

 

〇あらすじ

 家政婦の私は、80分しか記憶が持たない博士の世話をすることに。博士にとって数学はコミュニケーションの手段でもあった。私の誕生日と博士の腕時計の番号に友愛数を見出し、私の息子を彼の頭の形からすべてを受け入れる記号「ルート」と呼ぶ。私と息子と博士の間には次第に友情が芽生えていく。

 

〇数学と物語と

 本作の最大の魅力は、数学的な内容と3人によるストーリーの内容とが違和感なく結びついているところだと思います。「私」が博士の家政婦として派遣されたところから話が始まります。博士にはいくつか特殊な事情があり、一つは優秀な数学者であることでした。ところが、事故により記憶が80分しかもたないようになってしまい、今では義理の姉の元に身を寄せ、たまに数学の懸賞を送ったりして日々を送っていました。博士にとって「私」は毎日「初めて会う家政婦」でした。そんな博士にとって、数学は誰かと交流するための手段でもありました。

 本作には、友愛数完全数、双子素数といった様々な数字が登場します。博士の専門は数学の女王と呼ばれる整数論で、素数についての話が多かったです。博士は数学を知らない「私」や小学生のルートにも(そして読者にも)分かりやすく説明してくれます堅苦しい証明や複雑な定理といったイメージが多い数学ですが、素数のシンプルさや美しさには興味をそそられます。一見なんでもないような数字でも、何か意味を見出すことで特別な数字に見えてきますね。それが博士との友情に繋がっていき、読者としても共感しやすくなっています。

 本作の中でも重要な意味を持ち、博士が愛した数式でもあるのが、オイラーの公式と呼ばれるものです。

 e^{{i\pi }}+1=0

 iは2乗すると-1になる虚数、πは3.1415・・・と続く円周率、eは複利計算を無限に続けると行き着く数でネイピア数と呼ばれ、数学や物理の世界では重要とされる数です。詳しい説明は専門家の方に任せますが、いかにもよく分からない文字が3つまとまったものに1を加えると0になるというのが不思議で、どこか美しさを感じます。複雑に見えるものが調和されてシンプルな等式に落ち着くところはまさに数学の神秘とも言えそうです。ちなみにこの等式を発見したオイラーは数学に熱中するあまり失明してしまったそうで、両目を失明してからも数学に取り組み続けたと言われています。なんとなく記憶を失っても数学を愛し続けた博士と重なる部分がありそうですね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

今年の課題図書を読んでみた。まとめ

 こんにちは。

 学生の皆さんはもう夏休みに入ったでしょうか。夏休みと言えば読書感想文。あらためてまとまった文章を書くのはなかなか大変ですよね。どうせ書かなければならないのなら、面白い本を読みたいものです。

 というわけで、今月は今年の課題図書を読んでみました。

 

 

【小学校低学年向け】

『つくしちゃんとおねえちゃん』紹介 - 本をめぐる冒険

 ちょっといじわるなおねえちゃんと、そんなおねえちゃんが大好きなつくしちゃんのちょっとした日常。

 

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『ばあばにえがおをとどけてあげる』紹介 - 本をめぐる冒険

 笑わなくなってしまった「ばあば」に笑顔を届けるため、わたしが頑張ります。

 

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『すうがくでせかいをみるの』紹介 - 本をめぐる冒険

 「すきなものでせかいをみる」というシンプルな主張と、味わい深い絵が印象的な絵本。

 

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『おすしやさんにいらっしゃい!』紹介 - 本をめぐる冒険

 魚たちがさばかれてお寿司になるまでを写真付きで説明します。食育もの。

 

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【小学校中学年向け】

『みんなのためいき図鑑』紹介 - 本をめぐる冒険

 いろんなときに思わずついてしまう「ためいき」が動き出したら?周りに気を配りまくる主人公がいいヤツ。

 

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『チョコレートタッチ』紹介 - 本をめぐる冒険

 お菓子が好きなジョンはあるとき、口にするものがすべてチョコレートに変化するようになってしまい・・・。ユーモアあふれるコメディ。

 

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『111本の木』紹介 - 本をめぐる冒険

 女の子が生まれたら、111本の木を植えよう。インドのとある村での実話を元にしています。

 

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『この世界からサイがいなくなってしまう』紹介 - 本をめぐる冒険

 日本でも人気のサイは、実は絶滅の危機にあります。それは人間による密猟が原因でした。

 

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『りんごの木を植えて』紹介 - 本をめぐる冒険

 大好きなおじいちゃんが病気に。でもおじいちゃんは延命治療はしないつもりだと言います。

 

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『風の神送れよ』紹介 - 本をめぐる冒険

 準備も本番も子供たちだけで行う、長野にある実際の行事をモデルとした作品。コロナ禍だからこそ感じるものもありました。

 

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『ぼくの弱虫をなおすには』紹介 - 本をめぐる冒険

 日本では話題になりにくい人種差別を扱った作品。

 

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『捨てないパン屋の挑戦』紹介 - 本をめぐる冒険

 パンがきらいだったパン屋の息子が、環境に配慮した「捨てないパン屋」になるまでの物語。ノンフィクションですが、かなり波乱万丈で面白かったです。

 

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【中学生向け】

『セカイを科学せよ!』紹介 - 本をめぐる冒険

 人種差別2冊目。舞台は日本。最近では、日本でもいろいろな人種の人がいるのが当たり前になりつつあります。

 

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『海を見た日』紹介 - 本をめぐる冒険

 親を亡くした子供たちが、劣悪な環境に置かれながらも前を向き続け、最後には本当の姉弟のようになっていきます。

 

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『江戸のジャーナリスト 葛飾北斎』紹介 - 本をめぐる冒険

 世界的にも高く評価されている葛飾北斎。たくさんの名作を生み出した北斎はどんな生涯を送ったのでしょうか。

 

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【高校生向け】

『その扉をたたく音』紹介 - 本をめぐる冒険

 長くモラトリアムにいる無職の男が老人ホームでの出会いを通じて立ち上がるきっかけをもらいます。今回の本の中でも平均年齢高め。

 

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『建築家になりたい君へ』紹介 - 本をめぐる冒険

 隈研吾さんが建築家を目指したきっかけや独自の建築観について、過去のエピソードを交えて語られています。建築家を目指していない君にも。

 

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『クジラの骨と僕らの未来』紹介 - 本をめぐる冒険

 子供の頃から生き物好きで、そのまま研究者になった中村玄さん。本当に好きなものを仕事にしています。

 

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 今回は絵本や児童文学を久しぶりにたくさん読みましたが、期待していた以上に面白かったです。シンプルで分かりやすい内容でありながら、大人でも答えるのが難しい問題をストレートに問いかけてくる感じは、一般的な読書ではなかなか味わえない経験だったように思えます。むしろシンプルなだけに誤魔化しがきかない部分もあるのではないでしょうか。

 内容的には、学校・学年を問わず「自分の好きなこと」をやろう、という本が多かった気がします。「好きなことして生きていく」ではないですが、「好き」はそれ自体が強い原動力になります。「好きなこと」のためならやる気も出ますし、多少は頑張れます。楽しそうにやっていれば、周りからもよく見られます。一方で「好きなこと」には言い訳ができません。そんなことをすれば、「アンタが好きでやっていることでしょ」と言われてしまいますね。今回読んだ本からはそんなエールのようなものを感じました。子供たちにはぜひ自分の好きなことを見つけてとことん追及してほしいと思います。

 また、学年が上がるにつれて職業選択の参考になるような本も多く選ばれていました。特に高校生になると将来の進路を決める時期に差し掛かってきます。ですが、将来の職業に対して明確なイメージを描けている人も少ないと思います。隈研吾さんや中村玄さんは実際に「好きなことを仕事にしている」方たちですし、『その扉をたたく音』はそれが見つけられずにいる男が主人公でした。課題図書の選出に当たっては、そんな高校生たちの悩みに対するささやかなアドバイスになるような本が選ばれているのかもしれませんね。

 個人的なおすすめを挙げるとしたら『海を見た日』です。今回の中で一番読みごたえがあったと感じたのが『海を見た日』でした。ADHDアスペルガー症候群の子供たちからみた歪んだ世界の見え方は、こんな表現があったのかと驚きましたし、それを違和感を残しつつ表現する翻訳の技術も素晴らしかったです。もちろんストーリーにもいつの間にか引き込まれていき、最後は普通に感動してしまいました。特に、タイトルが回収される「海を見た」シーンは、非常に爽やかで美しいシーンとして印象に残っています。一瞬で絶望から希望へと反転するような、本作を象徴するような場面となっています。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。