本をめぐる冒険

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『八つ墓村』紹介

 こんにちは。

 唐突ですが、私はこれまで金田一耕助シリーズを読んだことがありませんでした。金田一と言えば、人が何人も死んだり、猟奇的な殺人事件があったりと、ホラー的な要素もあることで有名ですね。最近暑くなってきたこともあり、ふと読みたくなりました。

 さて、今回は横溝正史さんの『八つ墓村』を紹介します。

 

 

 

〇あらすじ

 八つ墓明神の伝説が残る村で、田治見家の主人・要蔵が32人もの村人を殺すという大虐殺が発生した。それから20年ほどが経ち、辰弥が八つ墓村に帰ってきた。事件の原因と思われる彼に対し、村人たちは激しい恨みを抱いていた。果たして、辰弥の周囲では警告文の通りに毒殺事件が続くことになるのだった。

 

 

〇登場人物

・田治見要蔵・・・田治見家の主人。32人を虐殺し、行方不明に。

・久弥   ・・・要蔵の息子。病人。

・春代   ・・・要蔵の娘。

・小竹   ・・・要蔵の伯母。

・小梅   ・・・要蔵の伯母。小竹とは双子。

・鶴子   ・・・要蔵の妾。監禁されたが逃亡。

・辰弥   ・・・鶴子の息子。語り手。

・亀井陽一 ・・・鶴子の恋人。隠れて会っていた。

・里村修二 ・・・要蔵の弟。

・慎太郎  ・・・修二の息子。

・典子   ・・・修二の娘。

・森美也子 ・・・野村家当主の義妹。美しい寡婦

・井川丑松 ・・・辰弥から見て母方の祖父。第一の犠牲者。

・新居   ・・・丑松の主治医。

・久野   ・・・医者。新居に患者を奪われ、落ち目に。

 

 

〇感想

 本作は、全体的にかなり陰惨でおどろおどろしい雰囲気に満ちています。冒頭から、8人の落ち武者を村人たちが襲った話や、その襲撃の首謀者の子孫・田治見要蔵が妻子を虐待し、逆上して村人を32人も殺害した話が語られます。本編が始まる前の時点で40人が死んでいるのは、金田一耕助シリーズの中でもトップクラスです。特に、懐中電灯を頭に突き刺したシーンは結構有名ですね。また、本作の語り手となるのは、32人殺しの原因と考えられている辰弥という青年で、村に入るなり怪しげな老婆から「お前のせいで人が死ぬ」と言われてしまいます。その言葉通り、辰弥の周りでは次々と人が死んでいくことになります。彼に対する村人たちの恨みは深まっていき、次は何が起きるのか、読んでいる方も緊張感が高まっていきます。

 一方で、辰弥が女性陣からやたらモテるのも本作の特徴です。都会にもいないような美貌を持つ美也子が辰弥を迎えに来て、村では姉の春代や姪の典子が気のある素振りを見せます。辰弥は辰弥で好意を寄せられてまんざらではない様子です。彼女たちと一緒に逃げ回ったり冒険したりと共に危機を乗り越えていくうちに、それぞれといい感じになります。冒険・青春小説らしい感じは、昔のミステリー作品っぽくない傾向で意外に感じました。ひょっとすると異様な雰囲気の村で殺人が続くことに対するバランスをとったためでしょうか。そのせいか、我らが名探偵の陰が少し薄くなっている気もします。語り手が辰弥であることも相まって、名探偵要素はすこし物足りなかったです。

 たくさん人が死ぬ事件が読みたい、スリルある展開を楽しみたい人にはおすすめです。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。