本をめぐる冒険

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『本陣殺人事件』紹介

 こんにちは。

 唐突ですが、私はこれまで金田一耕助シリーズを読んだことがありませんでした。金田一と言えば、人が何人も死んだり、猟奇的な殺人事件があったりと、ホラー的な要素もあることで有名ですね。最近暑くなってきたこともあり、ふと読みたくなりました。

 さて、今回は横溝正史さんの『本陣殺人事件』を紹介します。

 

 

 

〇あらすじ

 かつての宿場の本陣だった一柳家では、当主の賢蔵と久保克子との婚礼が取り行われようとしていた。その新婚初夜となる晩、恐ろしい悲鳴と荒々しい琴の音が鳴り響いた。離家に駆け付けると、夫婦になったばかりの2人が血塗れで死んでおり、しかも現場は密室になっていたのだった。

 

 

〇登場人物

・一柳賢蔵 ・・・長男。一柳家の当主。

・糸子刀自 ・・・先代未亡人。

・妙子   ・・・長女。上海に嫁いでいる。

・隆二   ・・・次男。医師。

・三郎   ・・・三男。退学。

・鈴子   ・・・次女。病弱。

・良介   ・・・賢蔵の従兄弟。分家。

・秋子   ・・・良介の嫁。

・久保克子 ・・・賢蔵の結婚相手。小作人の娘。

・銀造   ・・・克子の叔父。

 

 

〇感想

 名探偵・金田一耕助が初めて登場する本作は、本格ミステリーの王道とも言える”密室殺人”を真正面から扱っています。変わった風習の残る地方の名家が舞台だったり、いかにも怪しげな男がやはり怪しげに現れるなど、金田一耕助シリーズ独特の雰囲気も初作品からあったようです。また、密室の帝王と呼ばれたディクスン・カーなど、有名ミステリー作家の名前がたくさん登場し、推理小説好きの心をくすぐります。本作のトリックもしっかりしており、文章の中に巧妙な伏線が隠されていました。残念ながら私は解けませんでしたが、筆者が読者に直接語りかける感じが某有名作を連想させて面白かったです。

 文庫版では他にも、生き写しの二人の因縁がもたらす惨劇が書簡体形式で語られる『車井戸はなぜ軋る』や、黒猫を看板猫とする黒猫亭で顔のない死体が見つかる『黒猫亭事件』も収録されています。形式に凝っていたり、読者への挑戦を思わせる部分があったりと、メインとなるトリック以外にも読者を楽しませる要素があったのが面白かったです。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。