こんにちは。
「秋と言えば」シリーズ、最後はもちろん読書の秋。10月27日~11月9日は「読書週間」でもあります。本を読むのにぴったりの秋の夜長には、せっかくなら「本についての本」を読むのはいかがでしょうか。
というわけで、11月のテーマは『読書』です。
作家は本を始めるだけである。読者が本を終わらせる。
サミュエル・ジョンソン(イギリスの文学者/1709-1784)
さて、今回はカルロス・ルイス・サフォンさんの『風の影』を紹介します。
〇あらすじ
ダニエルは本屋を営む父に連れられて「忘れられた本の墓場」を訪れた。迷宮の中で彼を待っていたのは、フリアン・カラックスの『風の影』という一冊だった。その本は数々の出会いをもたらし、彼の人生をも変えてしまう。
でも、ぼくには確信があった。あの本は、もう何年もまえから、あそこでぼくを待っていた。いや、おそらく、ぼくが生まれるまえから、ぼくを待っていたのだと。
〇感想
「人生を変えてしまう本」とは、読書によって人生観が変わってしまうことに対してよく使う言い回しですが、本作でも文字通り登場人物の人生を変えてしまう本が登場します。10歳のダニエルは『風の影』という本を手にします。「忘れられた本の墓場」とは、時代と共に読まれなくなって世間から忘れられてしまった本が集まる場所で、この時点で本作の神秘的な雰囲気が出ています。ダニエルは『風の影』によって恋に落ちて失恋したり、本の作者のカラックスの過去を探ったりと様々な経験をすることになります。また、カラックスの著書を買い占めては燃やしてしまう「顔のない男」や、ダニエルたちの周囲を嗅ぎまわる危険な刑事も登場し、サスペンス的にも二転三転していきます。父の跡を継いで順当に本屋を経営すると思われていたダニエルでしたが、一冊の本を手にしたことで本当に人生が変わっていきます。「人生を変えてしまう本」は読書家にとっては憧れですが、文字通り命の危険がある本というのはちょっと恐ろしいですね。
本作は、翻訳のおかげもあって印象に残る言い回しが多かったです。「風の影」や「忘れられた本の墓場」、「顔のない男」といった言葉選びも常に端的で、頭にすっと入って来やすかったです。スペイン文学は(多分)初めて読みましたが、神秘的な雰囲気とサスペンスのバランスよくて面白かったです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。