本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『華氏451度』紹介

 こんにちは。

 「秋と言えば」シリーズ、最後はもちろん読書の秋。10月27日~11月9日は「読書週間」でもあります。本を読むのにぴったりの秋の夜長には、せっかくなら「本についての本」を読むのはいかがでしょうか。

 というわけで、11月のテーマは『読書』です。

 古典とは、人々は称賛するが読まない本のことである。

マーク・トウェインアメリカの小説家/1835-1910)

 さて、今回はレイ・ブラッドベリさんの『華氏451』を紹介します。

 

 

〇あらすじ

 書物を読むことが禁じられている世界。モンターグは昇火士として書物を燃やす仕事をしていた。しかし、隣に越してきたクラリスという少女と話し、本を持っていた女を火あぶりにしたことで、本を燃やすという常識に疑問を持ち始める。

 

「わかりません。ぼくらは、しあわせになるために必要なものはぜんぶ持っているのに、しあわせではない。なにかが足りないんです。」

 

〇感想

 今は消防士のことは英語で「fire fighter」と言うそうですが、以前は「fire man」と言いました。本作に描かれているファイアマンは、火事を消すのではなく、本を燃やすのが仕事の昇火士のことです。本作は、「書物は燃やさなければならない」という、価値観や常識が反転したSF的な世界設定となっています。彼らは顔中真っ黒にしながら昇火器で本を焼き尽くし、そのヘルメットには「451」の数字が輝いています。華氏451度は摂氏に直すとだいたい233℃で、紙の燃え始める温度とされています。これが「摂氏233度」だと、なんとなく迫力に欠ける気がしますよね。見慣れた摂氏ではなく、華氏で言われることにより不気味さが増している気がするというのは面白いですね。

 本作はいわゆるディストピア小説で、書物を読むことも所持することも禁止される世界が描かれています。ディストピア小説は一見極端な世界を描いているようで、実は現実と変わらない部分もあってハッとさせられることがあります。家まで燃やすのは現代日本だと想像もできないですが、テレビやネットによって本が駆逐されてしまうのは残念ながら当てはまっている気がします。出版不況で本屋の経営が厳しくなっているとも言いますし、気軽に本が読めなくなる日が来たらと思うとちょっと怖くもあります。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。