本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『本を読むひと』紹介

 こんにちは。

 「秋と言えば」シリーズ、最後はもちろん読書の秋。10月27日~11月9日は「読書週間」でもあります。本を読むのにぴったりの秋の夜長には、せっかくなら「本についての本」を読むのはいかがでしょうか。

 というわけで、11月のテーマは『読書』です。

 読書は私たちに未知の友人をもたらす。

オノレ・ド・バルザック(フランスの小説家/1799-1850)

 さて、今回はアリス・ファルネさんの『本を読むひと』を紹介します。

 

 

〇あらすじ

 アンジェリーヌばあさんの一家は、その日暮らしの貧しさの中で、怠惰と暴力に満ちた生活をしていた。そんなジプシーの家族のところへ、図書館の責任者であるエステールが子供たちに本を読みにやってくるようになる。

 

 一生涯あたしは貧しくて運がなかった。でもいつでも自分の人生が好きだった。

 

〇感想

 ジプシーという名前は本の中では聞いたことがありますが、日本に暮らしているとその実態までは分かりません。本作では、現代のフランスにおかるジプシーの生活が詳細に描かれます。定住することも定職に就くこともできず、どうしようもない貧困の中で夫は妻に暴力を働き、妻はただ耐え、子供たちは学校に通うこともありません。日本と同じくフランスにも子供が教育を受ける権利はありますが、ジプシーの存在は半ば公然と無視されていたようです。教育が受けられないと、結局子供たちもそこから抜け出すことができません。それが貧困の恐ろしさと言えます。一方で、ジプシーの持つ誇り高さも感じられました。自分たちの家族をなによりも大切にし、エステールたち外部の人間のことは区別して「外人」と呼びます。それがまた変われない原因ともいえるのが難しいところです。

 そんなジプシーの一家の元へ、「人生には本が必要だ」と言ってやってくるのがエステールでした。毎週水曜日に彼女の行う読み聞かせを、子供たちはすぐに心待ちにするようになります。その後不幸な出来事があり、エステールは子供を学校に通わせるためにさらに奮起します。本を読むことから傷ついた心を癒し、子供たちの未来まで変えていくところに、本や物語の力を感じました。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。