本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『文学少女対数学少女』紹介

 こんにちは。

 皆さんは「数学」と聞くと、何を思い浮かべますか?多くの人が抽象的で難しいと考える一方、他にはない論理的な純粋さや美しさを感じる人もいたりと、結構好き嫌いが分かれる分野です。また、一般的には小説のような文学とは対極にあるイメージだと思います。ですが、数学を題材とした本というのも実は数多く書かれています。

 というわけで、8月のテーマは『数学』です。

 さて今回は、陸秋槎さんの『文学少女対数学少女』を紹介します。中国

 

 

〇あらすじ

 自作の推理小説のチェックをしてもらおうと思っていた私は、数学の天才と噂される韓采蘆(かんさいろ)の部屋を訪れる。

 韓采蘆と仲良くなった私は、彼女が数学の大会で獲得したフランス旅行に同行することになった。采蘆はフェルマーの最終定理について説明しようと小説を書くが、華裕可が何者かに襲われる事件が起きる。(『フェルマー最後の事件』)

 高校最後の夏、洋館を舞台にした大作を書き上げようと奮闘している私の元に、韓采蘆から電話が入る。彼女が家庭教師をしている家がいかにも推理小説向けであり、教え子も悲劇のヒロインにぴったりだという。(『不動点定理』)

 

 

〇数学と物語と

 本作はどの話にも作中に「犯人当て推理小説」が登場するという二重構造になっています。『連続体仮説』では文学少女で語り手でもある陸秋槎が、『フェルマー最後の事件』では数学少女で探偵役でもある韓采蘆が、『不動点定理』では采蘆の教え子で秋槎と同じく小説を書いている黄夏籠が、『グランディ級数』では再び陸秋槎が、それぞれ小説を書いています。ミステリーファンにとってはおなじみの「読者への挑戦」を作中作という形で取り上げており、解答の唯一性をどう担保するのかがテーマとなっています。

 『文学少女対数学少女』というタイトルながら対決要素はあまりなく、そこそこ社交的なミステリ好きの文学少女と孤立しがちな天才数学少女が、推理小説と数学を通して仲良くなっていきます。2人があっという間に友達になってしまい、采蘆の変人さがかなり薄くなってしまうのが個人的には物足りないのですが、もしかしたら中国でもこういうライトな感じが流行っているのかもしれませんね。

 さて、本作に登場する数学ですが、ほとんど理解できなかったです。今月何度も登場しているフェルマーの最終定理だけはなんとか食いつける程度でした。ただ、秋槎は初めから数学はお手上げ状態、采蘆もどうせ説明しても分からないよでしょ、という態度なので、読者的にも軽くと読み流すのが正解な気がします。それよりも犯人当てに挑戦してみたり、「犯人当て」という形式が抱える問題についての理屈を読んだりして楽しむのがいいのかなと思いました。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。