本をめぐる冒険

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『笑わない数学者』紹介

 こんにちは。

 皆さんは「数学」と聞くと、何を思い浮かべますか?多くの人が抽象的で難しいと考える一方、他にはない論理的な純粋さや美しさを感じる人もいたりと、結構好き嫌いが分かれる分野です。また、一般的には小説のような文学とは対極にあるイメージだと思います。ですが、数学を題材とした本というのも実は数多く書かれています。

 というわけで、8月のテーマは『数学』です。

 さて今回は、森博嗣さんの『笑わない数学者』を紹介します。S&Mシリーズの3作目となりますが、本作単体でも十分楽しめるミステリーです。ミステリー作品なのでネタバレに注意して書いていきたいと思います。

 

 

〇あらすじ

 12月25日、犀川創平は西之園萌絵と待ち合わせていた。2人は、三ツ星館で行われる天王寺翔蔵のパーティーに招かれていた。天王寺博士は、余興として庭にあるオリオン像を消し、皆を驚かせる。翌朝、再び現れたオリオン像の元で天王寺律子が死体で発見される。さらに律子の部屋では息子の俊一が殺害されていた。

 

〇数学と物語と

 森博嗣さんと言えば『すべてがFになる』が有名ですが、本作にもいわくありげな一族、有名な建築家が立てた不思議な館、そして不可解な殺人事件という、本格ミステリーの王道的な要素が詰まっています。地面に建てつけてある巨大なオリオン像が一瞬で姿を消し、朝になって再び現れるという大掛かりなトリックもあり、ミステリー作品としてとても満足度が高かったです。

 犀川先生がまたカッコいいですね。普段は飄々としている感じですが、閃きが下りてくる瞬間とのギャップがたまらないですね。一瞬にして謎を解き明かす神懸かり的な閃きは名探偵の特権です。西之園君も直感や計算力は優れているのに、料理や恋愛については抜けている部分があっていいキャラだと思います。

 タイトルになっている「数学者」である天王寺博士はかなり謎めいた人物で、初登場シーンでは主催するパーティーに顔を出さずに数学クイズを出題してきます。その中にビリヤードの玉を使った問題が登場します。

『数字の書かれた玉5つをネックレスのようにリングに置く。このうち、連続する玉を1つから5つまで自由に取ってよい。ただし、離れた玉を取ることはできないとする。取った玉の和で1~21までの数を作りたい。5つの玉は何をどのように並べれば良いか。』

 要約するとこんな感じです。この問題は意外と難しく、作中で解けたのは犀川先生くらいでした。しかも、解答が本文中に登場しないです。私も犀川先生のように煙草を吸えば解けるようになるのでしょうか?

 その後事件が発生し、天王寺博士と直接対面することになります。博士は多くの読者の想像通り偏屈でとっつきづらい人物として描写されています。そこだけで見ると、いかにも天才数学者のテンプレといった感じも強いのですが、数学クイズを出題したりプラネタリウムを見せてくれたりオリオン像を消してみせたりと、パーティーを盛り上げてくれるサービス精神旺盛な一面もあります。そして最後には・・・?

 ここまで読んでくださってありがとうございました。