本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『女騎手』紹介

 こんにちは。

 今年5月29日には日本競馬界でも最も特別なレース・日本ダービーが開催されます。今月はそれにちなみ、『』まつわる本を読んでいきたいと思います。

 1998年、第65回日本ダービーで勝利したのはスペシャルウィークでした。皐月賞では馬場状態もあってセイウンスカイを捉えることができませんでしたが、ダービーでは5馬身差の圧勝。これが鞍上・武豊にとって初のダービー制覇となりました。その後もエルコンドルパサーグラスワンダーといったライバルたちと勝負を重ねました。引退後は、産駒のシーザリオが海外GⅠ制覇、ブエナビスタが父と同じ天皇賞(秋)ジャパンカップを制するなど、種牡馬としても大いに活躍しています。

 さて、今回紹介するのは、蓮見恭子さんの『女騎手』です。横溝正史ミステリー賞で優秀賞を獲得した作品となります。前回ご紹介したディック・フランシスを目指して書かれた作品だそうで、タイトル通り女性騎手が探偵役を務めます。

 ミステリー作品なのでネタバレには注意して書いていきます。

 

 

〇あらすじ

 あるレースで、ホナミローゼスがゲート直後にいきなり不自然な斜行を見せた。騎乗していた陽介は落馬して意識不明の重傷を負ってしまう。さらに、陽介の父でありローゼスの調教師である岸本が、厩舎で殴られて意識不明になっているのが発見される。女騎手・紺野夏海はただの偶然とも思えず、事件の調査を始めた。

 

〇この馬がすごい!

 本作は第30回横溝正史ミステリ大賞で優秀賞を獲得した作品が書籍化されたものです。受賞時のタイトルは『薔薇という名の馬』でした。その名の通りホナミローゼスという馬が事件の中心となります。個人的にはもとのタイトルの方がカッコいい印象を受けますが、なぜ変更したのか気になります。

 ホナミローゼスは大人しい性格の栗毛の牝馬で、額に細い流星を持つ美形らしいです。ローゼスに関わる騎手と調教師が事件の被害者となり、厩務員が容疑者として逮捕され、馬主には黒い噂があって、とローゼスは事件の渦中にいますが、もちろん彼女に罪はありません。「人間の欲望に巻き込まれる馬」という構図は競馬ミステリーの鉄板ですね。本作でも、人間なしでは生きられないサラブレットという生き物の悲運を感じました。

 本作はディック・フランシスを目指して書かれたとのこと。カッコよさや渋さは本家には敵いませんが、馬が事件の鍵を握っている部分は普通のミステリーよりも凝っていて良かったと思います。また、女性騎手であることの苦悩が書かれているところはこの作品独自のポイントです。気が強くやられたらやり返す性格の七海は今っぽい性格だなと感じました。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。