本をめぐる冒険

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馬の感染症にまつわるミステリー『馬疫』紹介

 こんにちは。

 今年5月29日には日本競馬界でも最も特別なレース・日本ダービーが開催されます。今月はそれにちなみ、『』まつわる本を読んでいきたいと思います。

 1984年の第51回日本ダービーを制したのはシンボリルドルフでした。ダービーの表彰式では岡部騎手は2冠を示す2本指を立てるポーズを取りました。その後の菊花賞も勝利し、史上初の無敗三冠馬となりました。さらに生涯GⅠ7冠制覇という偉業を達成し、皇帝の名にふさわしい活躍を見せました。

 さて、今回紹介するのは、茜灯里さんの『馬疫』です。馬の感染症に対処する馬防疫をテーマとしたサスペンス小説になります。馬術競技についても描かれており、競馬以外の世界を描いたかなり珍しい作品となっています。

 

 

〇あらすじ

 2024年、コロナ禍により三度目の東京オリンピックが開かれることになる。しかし予選会において馬インフルエンザが発生し、獣医の一ノ瀬駿美は対応に追われる。オリンピックに影響しないようにと封じ込めが行われるが、感染は急速に広がっていく。さらに、今回の馬インフルエンザの型は今までにない型であったことが判明する。感染源を駿美の実家の馬に押し付けるような遊佐の動きに駿美は疑いを持つ。

 

〇この馬がすごい!

 現代で馬と言えば競馬のイメージが強いですが、馬術競技や乗馬も馬と人が一緒に競うスポーツです。また、馬も生き物なので感染症に気を付ける必要があります。本作では、馬術競技選手の獣医師を主人公とし、「馬防疫」をメインテーマとした小説となっています。

 馬インフルエンザが急速に広まり、凶暴化した馬が各地で暴れてパニックを起こします。馬インフルエンザとは実在の感染症で、1971年ごろに日本でも初の感染、2007年の感染時には競馬の開催中止といった措置が取られています。大多数の人が考えたこともないような馬の感染症を正面から扱い、かなり細かな内容についても書かれているのが本書の特徴です。さらに本作の時代設定は新型コロナウイルスの流行後の2024年となっています。コロナの前と後での感染症に対する感覚の違いも踏まえており、そういった面でも普通の感染パニックものとは違った雰囲気を感じました。

 人間の都合で生かされも殺されもする馬という生き物について、改めて考える機会になりました。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。