本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

馬をめぐる冒険 ~馬に関する小説たち

 こんにちは。

 先日5月29日、日本競馬界で最も注目が集まるレースである日本ダービーが開催されました。ダービーは競走馬が生涯で1度しか出ることができず、競馬関係者にとっても特別な意味を持っています。かのイギリス首相チャーチルは、「ダービー馬の馬主になることは一国の宰相になることよりも難しい」と言ったともされています(諸説あり)。

 そんな特別なダービーにちなみ、今月は『』に関する本を読んでみました。

 

 

馬と馬に関わる人間たちを描く『黄金旅程』紹介 - 本をめぐる冒険

 本作の主役・エゴンウレアは、実在の競走馬であるステイゴールドをモデルとしています。気性の荒さやシルバーコレクターといったエピソードが取り入れられており、競馬好きにはさらに楽しめそうです。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

時代を感じる本格ミステリー 『死の発送』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬ミステリー1作目。電報やプライバシーなど時代を感じる設定が多く、競馬以外の部分でも楽しめるところが多かったです。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

秘密の情報を売る女から始まるサスペンス『馬を売る女』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬ミステリー2作目。競馬についての秘密情報を売る秘書の話。固定電話ならではの盗聴方法など、こちらもやや時代を感じました。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

SF成分強めの異色作『競馬の終わり』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬SF。22世紀の競馬を描く異色作。距離短縮の傾向は実際の競馬にも当てはまっています。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

名警部が競馬界の闇に挑む『日本ダービー殺人事件』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬ミステリー3作目。十津川警部シリーズ。ハイセイコータケホープが対決した日本ダービーがモデルになっています。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

馬の感染症にまつわるミステリー『馬疫』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬ミステリー4作目。馬の感染症を防ぐ馬防疫がテーマの珍しい作品。新型コロナウイルスも作中に出てきます。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

シビアな勝負の世界に生きる人たちを描く『トライアル』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬ミステリー5作目。競馬以外にも競輪、競艇オートレースと、真剣勝負の世界が舞台となります。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

世界一の名探偵が挑む競走馬の誘拐事件『白銀号事件』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬ミステリー6作目。今回のシリーズの中では断トツで古い作品。それでも面白かったです。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

有名な俗説を本気で考察する歴史ミステリー『成吉思汗の秘密』紹介 - 本をめぐる冒険

 義経=チンギス・ハン同一人物説を考察する歴史ミステリー。想像よりもサクサク読めます。馬は関係ないですが。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

元騎手が描く競馬ミステリー『大穴』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬ミステリー7作目。作者は、競馬の本家であるイギリスで女王陛下の専属騎手も務めた、元騎手のディック・フランシスです。秀逸な翻訳もあって個人的オススメ。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

『女騎手』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬ミステリー8作目。↑のディック・フランシスを目指して書かれたとのこと。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

スポーツの試合後のような読後感 『ダービーパラドックス』紹介 - 本をめぐる冒険

 競馬ミステリー10作目。レースの爽やかさがピカイチで、特に終わり方が印象に残りました。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

多くの人々の祈りを託された馬が走る 『優駿』紹介 - 本をめぐる冒険

 1頭の名馬とそれを取り巻く人間たちのドラマを描く作品。心に残る描写や展開が多く、今回のシリーズの中では一番読みごたえがありました。

 

itsutsuba968.hatenadiary.com

 

 

 

 今回の<シリーズ>を通して思ったこととしては、まずサラブレッドという生き物の純粋さや美しさをうたったものが多かったです。馬は500キロを超える巨体で時速60キロを出せる走力を持ちながら、優しく大人しい性格で人間のよき相棒でもあります。まるで人間を乗せるためにあるかのような背中をしているのもよく考えると不思議ですね。古くは労働力や移動手段として、現在でも人間の利益のために競馬に利用されています。今回読んだ小説ではどれも共通して、「馬に罪はなく、全ての根源は人間である」と描かれていました。馬の純粋さと比較すると余計に間のエゴが浮き彫りになりますね。だからこそ、レース描写の緊迫感や爽やかさが際立つとも言えます。人間の持つ負の側面を構わずぶち抜いてくれるような、圧倒的なスピード感は実際の競馬にも通じるものがありますね。

 また、競馬とミステリーの相性の良さが目立ちます。競馬はスポーツであると同時にギャンブルでもあり、大金が動く以上不正をしようとする人間が現れるのも当然の事と言えます。実際の競馬でも何度も八百長が行われたことがあり、ミステリーと非常に親和性が高いと言えます。小説としては、いかに競馬業界のリアリティーを確保するのかと、競馬知識のない一般読者に対してどのように説明するか、バランスをとるの難しそうです。

 他にも、実際の競走馬をモデルとした作品が多く、競馬ファンにとってはどの馬がモデルなのか考えながら読む楽しみがあるのも嬉しいポイントですね。

 個人的に今回のシリーズの中でオススメするのは、『大穴』優駿です。前者は元騎手なだけあって競馬業界についてかなり詳しく書かれており、同時にミステリーとしても非常に面白かったです。同じくらい翻訳も素晴らしく、今まで知らなかったのを後悔するくらいでした。<競馬シリーズ>として何作か出ているので、他の作品も読んでみたいと思います。後者はとにかく濃厚な人間ドラマが味わえます。登場人物一人一人に悩みや葛藤があり、なおかつ爽やかな読後感なので、万人にオススメできると思います。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。