本をめぐる冒険

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40年前は本よりテレビ? 歴代ベストセラー④~1980年

 こんにちは。

 突然ですが、みなさんはベストセラーの本は読みますか?

 本屋さんでは買う前に立ち読みができます(もちろん常識の範囲内ですが・・・)。服や靴を試着してから買うように、立ち読みによってその本が自分に合うかどうかを試してから買うことができます。

 ですが、ついタイトルだけで買ってしまうこともあります。最近の作品では『君の膵臓を食べたい』がインパクトのあるタイトルとして印象に残っています。タイトルだけで手に取らせるのはさすが作家ですよね。

 さて、出版科学研究所が発表している各年のベストセラーのランキングを見てみたいと思います。

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Tide HeによるPixabayからの画像

 

 今回は40年前の1980年のベストセラーランキングを見てみたいと思います。

 ちなみに、1980年と言えば

  • 経済安定期へ。この年、自動車の生産台数が世界一になりました。
  • この世代の若者は新人類と呼ばれました。ゲーム&ウォッチルービックキューブが発売され、オタク第一世代と言われることもあります。
  • 1980年生まれの有名人には、玉木宏さん(俳優)、眞鍋かをりさん(タレント)、桐谷健太さん(俳優)などがいらっしゃいます。

 と、高度経済成長は終わりましたが、世界第2位の経済大国として安定した時代だったようです。日本経済の黄金期とも呼ばれる時代にどんな本が読まれたのか、見ていきたいと思います。

 

順位 書 名 著 者 出 版 社
1 蒼い時 山口百恵 集英社
2 ノストラダムスの大予言(Ⅰ・Ⅱ) 五島 勉 祥伝社
3 ツービートのわッ毒ガスだ ツービート ベストセラーズ
4 項羽と劉邦(上・中・下) 司馬遼太郎 新潮社
5 人生抄 池田大作 聖教新聞社
6 自分のお金をどうするか 野末陳平 青春出版社
7 MY SEX 奈良林 祥 ベストセラーズ
8 四季・奈津子(上・下) 五木寛之 集英社
9 公文式数学教室 公文 公 公文数学研究センター
10 55年版 頭のいい税金の本 野末陳平 青春出版社

(出版科学研究所『出版指標年表』より)


 と言うわけで、1980年のベストセラーは山口百恵さん著『蒼い時』でした。人気絶頂期だった山口百恵さんは三浦友和さんとの結婚を発表し、21歳という若さで電撃引退しました。同作ではそれまでの半生が赤裸々に語られています。

 2位にランクインしている『ノストラダムスの大予言』では「1999年7月に地球が滅亡する」という予言が紹介され、話題となりました。ノストラダムスは16世紀のフランスの占星術師で、彼の残した難解な詩は現代にいたるまで影響を残します。

 3位の『ツービートのわッ毒ガスだ』は、お笑いコンビ・ツービートのギャグが満載のお笑い本。ツービートはビートたけしさんとビートきよしさんによるコンビで、毒舌漫才で人気を博しました。「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言葉が流行語になりました。

 4位には司馬遼太郎さんの『項羽と劉邦』がランクイン。中国初の大帝国である秦を滅ぼした項羽と、ただのごろつきから漢を興した劉邦という二人の対照的な英雄の戦いを描いています。

 8位の『四季・奈津子』は五木寛之さんの四季シリーズの第1章。4姉妹の次女・奈津子が恋人との関係に疑問を持ち、上京して仕事をしながら自分の生き方を考えていきます。四季シリーズはそれから23年の歳月を経て完結しました。

 他にもお金の本や公文式の本がランクインしているのも特徴的ですね。将来への投資に関する関心が強かったことが分かります。

 

 全体的に見るとテレビの影響がかなり強いことが分かります。

 このころにはほとんどの家庭にはカラーテレビが普及しています。内閣府の消費動向調査によると、当時のカラーテレビの普及率は98.2%に達しています。

 実は、2021年のカラーテレビ普及率は93.4%で当時よりも低い結果となっています(単身世帯だけで見るとさらに低い87.9%)。インターネットもなかった当時、テレビの影響力は絶大なものでした。

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 この年は松田聖子さんや近藤真彦さんがデビューした年でもあります。80年代アイドルブームと呼ばれ、アイドルの黄金時代が始まります。『蒼い時』は発売当時ですでに200万部を達成したそうで、当時のアイドルの人気がいかに凄まじいものだったかということが分かりますね。

 ちなみに翌81年は黒柳徹子さんの『窓際のトットちゃん』が売り上げトップでした。有名人の自叙伝はかなりランキングに入りやすいようです。誰かの人生を体験したような気分になれるのも、読書の醍醐味と言えます。

 おすすめは『項羽と劉邦』です。司馬遼太郎さんと言えば『竜馬がゆく』や『燃えよ剣』が有名ですが、同作は珍しく古代中国を舞台にしたダイナミックな作品となっています。カリスマ溢れる項羽と庶民派の劉邦は、現代社会のリーダー論としても参考にされることがあるそうです。

 次は10年後の1990年のベストセラーを見てみたいと思います。1990年と言えばバブル崩壊の年ですが、どんな本が読まれていたのでしょうか。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。