本をめぐる冒険

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50年前のランキングは異質? 歴代ベストセラー③~1970年編

 こんにちは。

 突然ですが、みなさんはベストセラーの本は読みますか?

 普段は文庫本派なのですが、新しい単行本を買ったときはいつもより大事にしたくなる気がします。真っ白な広いページに大きめの文字が並んでいると、なんだか贅沢をしているような、読んでしまうのが少しもったいないような気分になることもあります。貧乏性なだけかもしれませんが。

 本日は出版科学研究所が発表している、各年のベストセラーのランキングを見てみたいと思います。

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Tide HeによるPixabayからの画像

 

 今回は50年前の1970年のベストセラーランキングを見てみたいと思います。

 ちなみに、1970年と言えば

  • 戦後最長のいざなぎ景気と呼ばれる好景気。1964年には1回目の東京五輪が開催、1968年には世界第2位の経済大国となり、先進国の仲間入りも果たします。
  • 『巨人、大鵬、卵焼き』と呼ばれたのもこの時代。巨人はV9、大鵬は優勝32回とともにずば抜けて強かったため、卵は軒並み物価が上がる中で安価だったため、とされています。
  • 1970年生まれの有名人には、水野真紀さん(俳優)、桜井和寿さん(ミュージシャン)、羽生善治さん(棋士)などがいらっしゃいます。

 と、順調に経済成長が続いており、オリンピックや万博が日本で開催された時代でもあります。そんな華やかな時代にどんな本が読まれたのか、見ていきたいと思います。

 

順位 書 名 著 者 出 版 社
1 日本万国博公式ガイドマップ 講談社 日本万国博覧会協会
2 日本万国博公式ガイド 電通 日本万国博覧会協会
3 冠婚葬祭入門 塩月弥栄子 光文社
4 誰のために愛するか 曾野綾子 青春出版社
5 創価学会を斬る 藤原弘達 日新報道出版部
6 私の人生観 池田大作 文藝春秋
7 高田好胤 徳間書店
8 冠婚葬祭入門(続) 塩月弥栄子 光文社
9 スパルタ教育 石原慎太郎 光文社
10 高田好胤 徳間書店

(出版科学研究所『出版指標年表』より)


 と言うわけで、1970年のベストセラーは『日本万国博公式ガイドマップ』でした。大阪万博東京五輪に続くビッグイベントで、当時の日本人の熱狂ぶりは相当なものだったようです。太陽の塔や月の石の展示などは今でも話題に上りますね。2025年にはふたたび大阪で万博が開かれる予定です。

 3位に『冠婚葬祭入門』がランクインしているのは異質なように思えますが、この背景には核家族化が進んでいったことが考えられます。つまり、これまでは祖父母世代と同居していたので、マナー的なことは直接教わることができました。しかし、核家族化が進んで若い世代だけになると、伝統などが分からない家庭が増えていきました。同書はそんな時代にマッチした本だったと思われます。

 4位の『誰のために愛するか』は作家曾野綾子さんのエッセイ。

 『』と『』の2作がランクインしている高田好胤さんは薬師寺管主を務めた僧侶で、ユーモアあふれる法話で話題になりました。

 先月亡くなられた石原慎太郎さんは『太陽の季節』『「NO」と言える日本』『弟』など、多くのベストセラーを持っており、『スパルタ教育』もその一つです。内容的には賛否両論ある中で何度もベストセラーを出しているのは、歯に衣着せぬ彼の性格ゆえでしょうか。

 

 今回は小説が全くランクインしていませんでした。

 経済成長の裏で核家族化が進み、生活の豊かさと引き換えに誰に相談していいのか分からない不安を抱えている。少し寂しい気もしますが、ベストセラーもそうした状況を反映しているように思えます。宗教系の本が売れているのも、何かに頼りたいためかもしれません。

 本はいつでもどこでも読めて、誰でも受け入れてくれます。

 次は10年後の1980年のベストセラーを見てみたいと思います。安定成長期に入り、ジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれた時代には、どんな本が読まれていたのでしょうか。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。