本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『三月は深き紅の淵を』紹介

 こんにちは。

 「秋と言えば」シリーズ、最後はもちろん読書の秋。10月27日~11月9日は「読書週間」でもあります。本を読むのにぴったりの秋の夜長には、せっかくなら「本についての本」を読むのはいかがでしょうか。

 というわけで、11月のテーマは『読書』です。

 読書ほど安い娯楽も、長続きする喜びもない。

メアリー・ウォートリー・モンタギュー(イギリスの著述家/1689-1762)

 さて、今回は恩田陸さんの『三月は深き紅の淵を』を紹介します。

 

 

〇あらすじ

 不安定な空模様の三月、鮫島巧一は会長から読書家が集まるお茶会に招かれる。個性豊かな参加者たちは、『三月は深き紅の淵を』という幻の本を探していると言う。それは、巨大な書庫をいくつも持つこの家のどこかにあるそうで、鮫島はその本を探す賭けに巻き込まれる。

 

「駄目よ、物語は物語自身のために存在するの。」

 

〇感想

 変わった設定の中で謎が投げかけられるミステリーでありながら、作中では小説論や物語論が交わされるという、なんとも不思議な雰囲気の作品でした。本作は4つの章から構成されていて、どの話にも『三月は深き紅の淵を』というあからさまにいわくつきの本が登場します。1章では、『三月』のあらすじが語られるのですが、それがまた面白そうな内容で興味をそそります。各章ごとに『三月』の扱いが微妙に違っているので、『三月』の謎がとにかく深まっていきます。また、登場人物も一癖も二癖もある人達ばかりで、怪しげな世界観に引き込んできます。そんな胡散臭い雰囲気の中で、キットカットソフトサラダといったお菓子の具体的な商品名が登場するというのが、個人的にはアンバランスで面白かったです。

 第4章では、『三月』らしき小説を書いている部分と、親に捨てられた子供たちが集められた施設の物語が交互に展開されるのですが、それまでの3つの話に比べて、かなり異質で難解です。なぜだろうと思いましたが、本作には続編があるそうです。『三月』の世界がどう繋がっていくのか、先を読んでみたくなりました。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。