本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『ホケツ!』紹介

 こんにちは。

 突然ですが、秋と言えばスポーツの秋!気持ちのいい秋空に過ごしやすい気温、身体を動かすにはもってこいの季節になりました。

 と言うわけで、10月のテーマは『スポーツ』です。

 全国高等学校体育連盟によると、令和4年のサッカー部の部員数は男子14万7082人、女子1万507人でした。高校生全体では約300万人なのでおよそ5%、だいたい20人に1人がサッカー部に所属していることになります。サッカー部は運動部の中で所属している人数が最も多い、現在最も人気の部活となっています。

 さて、今回は小野寺史宜さんの『ホケツ!』を紹介します。華々しく活躍するレギュラーたちの陰で、彼らも頑張っています。

 

 

〇あらすじ!

 伯母に対し、試合に出場していると嘘を吐いてしまう大地。彼は3年になってもレギュラーになれず、同じポジションにはうまい1年生が入ってきた。さらには、マネージャーから他の選手との仲を取り持ってくれるように依頼されてしまう。

 

〇感想!

 サッカー部といっても試合に出られるのは一握りだけ。スポーツは実力がすべて。本作の主人公は、サッカー部に所属しながらいつもベンチを温めている大地という高校生が主人公です。試合には出してもらえず、練習ではパサー役、キッカー役、ゴールキーパー役と都合よく使われ、レギュラーとして出場している仲間たちに文句の一つも言えません。加えて、女の子からは他の部員との仲を取り持ってくれるキューピッドとして期待される始末。

 それでも、本作には独特の不思議な雰囲気があります。読み進めていくと、大地は親しみやすく優しい人柄から多くの部員たちから頼りにされていることが分かります。悩んでいる人がいれば損得関係なく関わっていき、話を聞いてアドバイスをします。人前に出て引っ張っていくタイプではないものの、大地に話を聞いてもらった人たちは彼をとても信頼していることが分かります。彼はなにも持っていないわけではなく、一緒にいる人を安心させるような誠実さや器の大きさといった人間性を備えているのでした。どうしても目立った活躍をしている人に目が行ってしまいますが、もし大地がいなければこのチームは崩壊していたんじゃないかとも思います。

 サッカー外でも、育ての親である伯母とのシーンがかなり好きです。大地は伯母に迷惑を掛けたくないと思っていますが、立派に自立している伯母は彼に経済的な不安を抱かせる気は全くありませんでした。それでいて大地をちゃんと一人前と認め、彼の意見を最大限尊重してくれます。最近こういうのに弱くて困ります。試合に出られなくてもここまで面白い、心温まるスポーツ小説は初めてでした

 ここまで読んでくださってありがとうございました。