本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『走れ!T高バスケット部』紹介

 こんにちは。

 突然ですが、秋と言えばスポーツの秋!気持ちのいい秋空に過ごしやすい気温、身体を動かすにはもってこいの季節になりました。

 と言うわけで、10月のテーマは『スポーツ』です。

 全国高等学校体育連盟によると、令和4年のバスケ部の部員数は男子8万3605人、女子5万2850人でした。高校生全体では約300万人なのでおよそ4%、だいたい23人に1人がバスケ部に所属していることになります。最近は日本でもプロリーグが発足するなど、バスケ熱が特に高まりを見せています。

 さて、今回は松崎洋さんの『走れ!T高バスケット部』を紹介します。連発されるギャグと流れるような展開に君は付いてこれるか!?

 

 

〇あらすじ!

 バスケ強豪校でいじめにより自殺寸前まで追い詰められた陽一は、都立T高に転校した。ほとんど公式戦で勝ったためしがないというT高バスケ部で個性豊かな仲間たちと出会ったことで、陽一は再びバスケを始める。

 

〇感想!

 本作の最大の特徴は、まるでバスケの速攻のような独特のテンポの良さだと思います。チビ、メガネ、のぞき魔、健太といった変人ばかりのチームメイトたちや小山先生のギャグと掛け合いの連続で、ギャグマンガのような、本当に終始ふざけているような雰囲気でした。ありえないと思っても、考える前に展開は次へ次へと進んでいます。本当に小説ならではというか、やりたい放題やってくれるのでむしろ清々しい気さえします。文体もさらっとしているので、駆け抜けるようにあっという間に読み切ってしまいました。

 恐らく作者は「楽しさ」を最も重視して本作を書いたのかなと思います。ありえる・ありえないといった次元を超越した何かを本作から感じました。結果が求められるプロ選手ならともかく、スポーツは楽しいからこそやるものです。Sportsという言葉はラテン語の「deportare」から来ており、もともとの意味は「運び去る、運搬する」、そこから転じて「気晴らし」「遊び」を意味すると言われています。スポーツ小説では、勝負に執着するあまり楽しさを忘れてしまうという展開がよくありますが、本作のような楽しさの表現は実はあまりなかったような気がします。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。