本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『この世界からサイがいなくなってしまう』紹介

 こんにちは。

 もうすぐ待ちに待った夏休み!夏休みと言えば、宿題の定番である読書感想文

 とは言え、あらためてまとまった文章を書くのはなかなか大変ですよね。ついつい後回しにして、最後に泣く泣くやることになるのはよく聞く話です。元学生の方には、今となっては懐かしい思い出かもしれませんね。

 というわけで、今月は今年(2022年)の課題図書に指定されている作品を読んでいきます。今回は味田村太郎さんの『この世界からサイがいなくなってしまう』を紹介します。小学校中学年向けの一作となります。

 

 

〇あらすじ

 人気の動物であるサイは、ツノを目当てにした密猟により、世界的に絶滅の危機に瀕している。南アフリカの国立公園では、サイを守るためにレンジャーたちが命がけで戦っている。

 

〇私なりの感想文

 日本ではあまり話題になりませんが、多くの動物たちが人間のせいで絶滅の危機に瀕しています。顔の先に一本生えたツノが特徴的なサイもその一種です。薬の成分になると言われているツノが高値で取引されるために、サイの密猟が盛んに行われています。かつては50万頭いたサイが、ここ100年で2万7000頭にまで減少してしまっているそうです。以前はアジア圏で密猟が活発に行われていましたが、アジアに住むサイは減少してしまいました。ジャワサイやインドサイは今ではそれぞれ80頭ずつしかいません。そのため、現在は主にアフリカで密猟が行われるようになりました。

 サイが生きたままツノを奪われるという話はかなり痛ましかったです。特にサイは仲間思いなため、悲劇が起きやすいと言います。母親は子供を守ろうとして密猟者に立ち向かっていき、子供も母親を守ろうとしてその場を離れようとしません。運よく生き残ったとしても、心に傷を負って人間を怯えるようになってしまうそうです。

 南アフリカではサイはビッグファイブと呼ばれる特別な存在で、密猟者からサイを守ろうとする人たちがいます。自然公園ではサイを守るためにレンジャーが日々訓練しています。それは犬や銃を使う、軍関係者による厳しい訓練です。それくらい武装した密猟者との戦いは命がけです。本作の中でも「ここで起きていることは戦争です」という言葉がとても印象に残っています。また、心に傷を負ったサイを保護し、野生に返すための取り組みも行っています。密猟者に対しては厳しく、サイに対しては優しく、そして困難に取り組んでいく粘り強さは、本当にすごいことだと思います。

 これは遠い国の話のようですが、日本でもペットを野に放したり虐待したりといった話がたまにニュースになります。また、アフリカで武装して密猟が行われる背景にはかつて植民地にされてきたという歴史もあり、先進国である日本も全く無関係ではありません。一方で、iPS細胞の研究が絶滅してしまったサイの復活につながるかもしれないと期待されています。ここまで辛いニュースばかりでしたが、少しだけ希望も残されているようです。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。