本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『111本の木』紹介

 こんにちは。

 もうすぐ待ちに待った夏休み!夏休みと言えば、宿題の定番である読書感想文

 とは言え、あらためてまとまった文章を書くのはなかなか大変ですよね。ついつい後回しにして、最後に泣く泣くやることになるのはよく聞く話です。元学生の方には、今となっては懐かしい思い出かもしれませんね。

 というわけで、今月は今年(2022年)の課題図書に指定されている作品を読んでいきます。今回はリナ・シンさんの『111本の木』を紹介します。小学校中学年向けの一作となります。

 

 

〇あらすじ

 インドのとある村では、男の子が生まれるとお祝いをし、女の子が生まれると静まり返っていた。女の子が結婚すれば相手にお金を贈る必要があり、さらに娘も相手の財産となったからだった。今では女の子が生まれると111本の木を植えるようになったという。これは実際にあった話。

 

〇私なりの感想文

 母親と水汲みに行くことが好きだったスンダルさん。お母さんが亡くなってしまいますが、木に抱き着くことで寂しさをまぎらわせました。大人になり、家庭を持ったスンダルさんは大理石工場で働きますが、緑が失われていくことを気にしていました。子供たちのために緑を豊かにしようと思い、村長になります。あるとき娘が亡くなり、スンダルさんは女の子が生まれたら111本の木を植えることを思いつきます。村人たちを説得し、女の子の将来のために基金を設立することを実現させていきます。

 異国風の絵も相まって創作された話みたいですが、これらは実際にあったことなのだそうです。日本では子供が学校に行くのは当たり前のことですが、インドの貧しい村では子供は労働力として使われています。教育を受けていないので貧困から抜け出すこともできません。かつてヨーロッパの植民地とされていた地域では、今でも多くの問題を抱えており、日本も他人事とは言い切れない部分があります。そういう意味では、今回の取り組みが現地のインド人の発案である点がとても素晴らしいと思います。ユニセフのような外部からの国際協力的な活動ももちろん大切ですが、自分たちで考えたことなら真剣度も違ってくると思います。押しつけや施しではないことで、現地の人たちは達成感も感じられるのではないでしょうか。

 エコフェミニストという言葉は初めて聞きました。環境問題と男女平等の問題はどちらも深刻な問題です。あえて二つの問題をつなげて考えるところが面白いところだと思いました。環境問題をあまり重視しない人であっても、自分の娘に教育を受けさせるとなれば協力するでしょうし、その逆もありえます。また、社会にはたくさんの難しい問題がありますが、この方法によって一気に二つの問題に取り組むことができます。どうせ取り組まなければならない問題がたくさんあるのなら、そっちのほうがお得な気もします。そう考えると、問題の解決策はひとつではないことに気が付きますね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。