本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『ルーシー変奏曲』

 こんにちは。

 みなさんは、秋と言えば何を思い浮かべますか?読書の秋ももちろんいいですが、秋と言えば芸術の秋ですね。たまには優雅なピアノの演奏に耳を傾けたくなります。

 というわけで、9月のテーマは『ピアノ』になります。

 ピアノの鍵盤の数は時代とともに増えていき、現在ではピアノの鍵盤と言えば88鍵が主流です。人間が音程を把握できるのは20Hzから4000Hzまでで、88鍵のピアノはそれをすべてカバーしています。ただ、最低音や最高音を使う曲はめったになく、「最高音の3音は必要ない」と主張しているメーカーさえあるそうですが。

 さて今回は、サラ・ザールさんの『ルーシー変奏曲』を紹介します。著者はヤングアダルト作品を多く手掛けている作家で、本作もティーンエイジャー向けの作品です。

 

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♪ あらすじ

 失敗は許されないのよ、ルーシー。

 弟のピアノの先生が亡くなったのに、いつもと変わらないベック=モロー家。かつてピアノから逃げ出したルーシーは、ママやおじいちゃんから冷たく突き放されていた。そこに新しい先生としてウィルがやってきて、ルーシーは再びピアノと向き合うことになる。

 

♪ 本の間奏

 素晴らしいピアニストになるように幼いころから厳しく育てられてきたルーシー。子供らしい思い出を作ることもできず、おばあちゃんの死に目に立ち会うこともできませんでした。家族のあまりの冷たさに一度はステージから逃げ出してしまい、おじいちゃんからも「二度とピアノは弾かないと決めたんだな。」と最後通牒を受けてしまいました。それ以来、ピアノに向かうことも許されず、家にも居場所はありませんでした。そんな中、弟の新しいピアノ教師としてやって来たウィルはルーシーにもピアノを弾くように促し、ルーシーもピアノ、そして自分の過去と再び向き合っていきます。友達と仲違いしたり、弟と喧嘩になったりと波乱もありながらも、一回り成長していく物語になっています。

 本作には、ウクライナ生まれのピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツの言葉が登場します。「必要なのは、頭と、心と、手段。心がともなわなければ、機械と同じだ」。ホロヴィッツは彼にしかできない独自の音で聴衆を魅了したそうです。ピアニストは職人的な超絶技巧だけでなく、表現力や感受性が必要とされる芸術家と言えそうですね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。