本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『ピアニストを撃て』紹介

 こんにちは。

 みなさんは、秋と言えば何を思い浮かべますか?読書の秋ももちろんいいですが、秋と言えば芸術の秋ですね。たまには優雅なピアノの演奏に耳を傾けたくなります。

 というわけで、9月のテーマは『ピアノ』になります。

 「ピアノがひとりでに鳴り出す」というと学校の怪談みたいですが、ピアノに最初に自動演奏機能が付いたのは15世紀ごろでした。19世紀になると音の強弱やテンポまで記録できるプレイヤーピアノが発明され、今でもドビュッシーやラフマリノフの演奏を聴くことができるそうです。

 さて今回は、デイヴィッド・グーディスさんの『ピアニストを撃て』を紹介します。アメリカ小説ですがフランス人監督によって映画化しヒットしました。

 

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♪ あらすじ

 金曜の夜で賑わう<ハリエッツ・ハット>に、ターリーという男がふらふらになって走りこんできた。ターリーはピアノを弾いていた弟のエディの元に向かい、自分が追われており、助けてくれるように頼んだ。そこへ二人の男が入ってくるが、エディはターリーが逃亡するのを手助けし、自分が厄介事に巻き込まれていくのを自覚する。

 

♪ 本の間奏

 フィラデルフィアが舞台でれっきとしたアメリカ小説なのですが、なぜか本国よりもフランスで大人気となっている本作。フランソワ・トリュフォー監督により映画化しヒットしました。

 本作の主人公エディは自分のことはあまり語らず、ただ物静かに微笑んでいることが多い人物でした。周囲の人たちからも、自動機械がピアノを弾いているかのように錯覚されていたほどでした。ですが、騒動に巻き込まれていき、ウエイトレスのレナとの仲を意識するようになるとともに、徐々に彼の過去が明かされていきます。彼は元コンサートピアニストで、紆余曲折あって現在は場末の酒場でピアノを弾いていました。現実のままならない感じが良く出ていて良かったです。かと言って心理描写が抑えてあるので悲劇的になりすぎることもなく、最初から最後まですらすら読めました。特にラストのピアノのシーンは救いという感じがしてすごく印象に残っています。

 ちなみに邦題タイトルの『ピアニストを撃て』は、ピアニストが貴重だった西部開拓時代、酒場に「ピアニストを撃たないでください」と張り紙がしてあったというエピソードをもじっているそうです。映画版のタイトルをそのまま小説の邦題にしたようで、小説の英語版原題は「Down There」(直訳すると『下の方にある』?)とかなり渋いです。映画版は原作とは違う部分が多いそうなので、機会があれば見てみたいですね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。