本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

終末をめぐる冒険

 こんにちは。

 早いもので今年ももう12月。2022年もまもなく終わろうとしていますね。みなさんにとって、今年はどんな年でしたか。

 今月は、今年の本や漫画にまつわるニュースも一緒に振り返ってみました。読書離れや出版不況と言われて久しいですが、調べてみると毎月何かしらの出来事がありました。出版業界全体でどうにか盛り上げようとしているのがよく分かります。

 というわけで、今月は「世界の終わり」をテーマに本を読んでみました。

 

 

〇12の終わり方

エンド1.『終末のフール』紹介 - 本をめぐる冒険

 小惑星エンド。衝突まであと3年となり、パニックになっていた人々は再び平穏を取り戻し、自分の過去と向き合います。

 

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エンド2.『こんなにも優しい、世界の終わりかた』紹介 - 本をめぐる冒険

 青い光エンド。何もかもが動きを止めてしまう光が静かに世界を終わらせていく中、繊細で優しい人たちが愛する人たちのところへ向かおうとします。

 

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エンド3.『終わりの街の終わり』紹介 - 本をめぐる冒険

 伝染病エンド。南極に一人取り残された女性と、死んだ人が向かう街の話が並行して進んでいき、世界に何が起きているのかがだんだん分かってきます。

 

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エンド4.『ザ・ロード』紹介 - 本をめぐる冒険

 核戦争(?)エンド。崩壊してしまった世界で、親子がただひたすらに道を辿っていきます。

 

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エンド5.『地上最後の刑事』紹介 - 本をめぐる冒険

 小惑星エンド。世界の終わりが迫る中、念願の刑事になれた男が自殺としか思えない事件を追います。

 

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エンド6.『終末少女』紹介 - 本をめぐる冒険

 黒い沼エンド。恐ろしい口によって世界が食われていく中、孤島に流れ着いた7人の少女たちの戦いが始まります。一見ファンタジー、またはSF、と見せかけて本格ミステリーという異色作です。

 

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エンド7.『世界の終わりの天文台』紹介 - 本をめぐる冒険

 核戦争エンド。世界が終わってしまう様子は出てこず、かたや北極圏、かたや宇宙の彼方で生き残った人々の孤独と交流が描かれます。

 

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エンド8.『渚にて 人類最後の日』紹介 - 本をめぐる冒険

 核戦争エンド。北半球からの放射能が迫る中、潜水艦に乗り込んで謎の信号の元へ向かいます。

 

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エンド9.『復活の日』紹介 - 本をめぐる冒険

 病原体エンド。人類が「かぜ」により滅んでしまった流れと、そこからの巻き返しが描かれます。圧倒的な科学知識からのオチが印象深いです。

 

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エンド10.『アイ・アム・レジェンド』紹介 - 本をめぐる冒険

 吸血鬼エンド。自分以外の人類が皆吸血鬼になってしまった男が、生き延びるために戦います。古い作品ですが、映像として想像しやすくて読みやすいです。

 

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エンド11.『此の世の果ての殺人』紹介 - 本をめぐる冒険

 小惑星エンド。衝突まであと数か月となった中で自動車教習をする二人。思いがけず殺人犯を追うことに。

 

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エンド12.『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』紹介 - 本をめぐる冒険

 ジャンクションエンド?私が世界の終わりに巻き込まれていく物語と、世界の終わりという名前の幻想的な街の物語が交互に展開されます。

 

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〇おわりに

 世界の終わりを描いた小説は「終末系」とも呼ばれ、さらに原因別に見ると、核戦争系と小惑星系と疫病系の3種類に分類できそうです。別に狙ったわけではありませんが、今回読んだ12作は、それぞれのタイプが3つずつ、その他が3つと綺麗に分けられました。

 核戦争が起きた場合、南極か北極圏、少なくとも南半球へ行くことで、ほんの少しだけ長生きできるようです。北半球にいると、核戦争が起きた瞬間におしまいです。また、核戦争系は人類が自分たちの手で破滅に導いているところもポイントになりそうです。中でも『渚にて』では、核戦争による地球滅亡が本気で考えられていた当時の空気感も感じました。その頃に読んでいたら、今とは違った感想になるのかもしれませんね。

 それに対して小惑星が衝突する場合は、残念ながら地球のどこにいようが関係がないようです。このパターンでは、地球を一つの惑星として大きな枠で捉える傾向があるようです。また、誰も助からない代わりに終わりの日が明確に予測され、その日までは自然災害もパンデミックも起きないのが特徴です。小説的には、人々が残りの時間をどう過ごすのかがテーマになります。『此の世の果ての殺人』では、残された時間で殺人犯探しに取り組みます。「世界の終わり」設定もストーリーに絡んでくる、新人作家と思えないくらい完成度の高い作品でした。

 最後の疫病パターンは、新型コロナを経験した我々からすると、今のところ一番親しみやすいかもしれません。ご存知の通り、感染症を食い止めるのは非常に難しいことです。核戦争や小惑星はこれまでの人類の歴史上経験したことがありませんが、黒死病スペイン風邪といったパンデミックは、これまでに実際に何度も起きています。にもかかわらず、医療が発達した現在においても、世界中があんなにもパニックになってしまうもののようです。人類を滅ぼす可能性が一番高いのは巨大な隕石ではなく、ひょっとして目に見えない小さなウイルスなのかもしれませんね。『復活の日』では、「かぜ」により人類が滅亡します。科学の功罪というテーマも一貫していて、滅亡からの展開も二転三転あってとても面白かったです。

 どの作品においても、残された人々は最後まで生きようとしていたのが印象的でした。もうすぐ全てが終わってしまうという極限状態だからこそ、生きることの意味がクローズアップされるというのが、逆説的で面白いですね。ただ絶望的な雰囲気なだけでなく、最後まで人としての意志や希望を感じられました。

 ここまで読んでくだってありがとうございました。

 終わり。