本をめぐる冒険

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『クリスマス・カロル』紹介

 メリークリスマス!

 今日12月25日はクリスマスです。12月に入ったとたんに日本中がクリスマスのBGMばかりになるので、個人的には「ようやく25日になったのか」とも思ってしまいますが。

 さて、今回はディケンズさんの『クリスマス・カロル』を紹介します。

 

 

〇あらすじ

 クリスマスイブの日、けちで冷たい、がりがり爺のスクルージの前に、仕事仲間だったマーレイの幽霊が現れる。彼は生前の行いから、死後7年間もさまよっていると言う。さらに、これから3日間、深夜になるとスクルージのところへ3人の幽霊が順番にやって来ると予告する。

 

 打てよ、死よ、打てよ!そしてその傷口から彼の良い行動が噴き出し、不滅の生命を世界に植えつけるを見るがよい!

 

〇感想

 最初はスクルージのあまりの冷酷さに憎たらしさを感じてしまいます。「がりがり爺」という言葉は懐かしささえ覚えました。ですが、彼も幽霊が現れてからはただひたすらに怯えることになります。3人の幽霊は過去、現在、未来を象徴した幽霊で、辛い子供時代や温かなクリスマスを過ごす他の家庭の様子、惨めな末路を見せてきます。個人的には、悲惨な未来を見せられるのが一番応えそうだと思いました。周囲の人間に冷たくするあまり、独り寂しく孤独死を迎え、死後は同じことをやり返されてしまいます。因果応報と言えばそれまでなのですが、将来のことは先が見えないだけになおさら不安になりそうです。未来の幽霊だけ全く言葉を発しないのも不気味でした。

 物語のラスト、これまでの孤独な生き方を後悔したスクルージは、まるっきり別人のように変わります。クリスマスを誰よりも楽しげに祝い、甥や書記にも優しく接します。これでスクルージを許してあげるあたり、2人とも人間ができているなとも思いますが、クリスマスとは誰にでも優しくなれる特別な日なのかもしれません。日本では恋人同士で過ごすクリスマスイブの方に注目が集まりますが、欧米ではクリスマスは家族で過ごすものと考えられているというのは有名な話です。身近な人と楽しいひと時をおくるのが、本来のクリスマスの過ごし方なのでしょう。誰かに優しくすれば、自分にも優しさが返ってきます。これもある意味では因果応報です。

 それでは、よいクリスマスを。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。