本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『復活の日』紹介

 こんにちは。

 早いもので今年ももう12月。2022年もまもなく終わろうとしていますね。みなさんにとって、今年はどんな年でしたか。

 9月には、東野圭吾さんの小説を原作とした映画『沈黙のパレード』が公開され話題となりました。ガリレオシリーズは小説としてももちろん人気があり、このブログでも『容疑者ⅹの献身』を紹介したことがありましたね。

 今年も色々ありましたが、なるべくやり残したことのないように年の終わりを迎えたいですね。

 というわけで、今月は「世界の終わり」をテーマに本を読んでいきたいと思います。

 さて、今回は小松左京さんの『復活の日』を紹介します。

 

 

〇あらすじ

 吉住は原子力潜水艦ネーレイド号の中から、気球を通して変わり果てた東京の様子を見た。未知の病原菌は、瞬く間に世界を終わらせてしまっていた。

 

 そうだ、人間は、めいめいが思っているより、はるかにはなればなれにくらしている。

 

〇感想

 本作では、インフルエンザウイルスにより世界が終わります。時代は1960年代。本作は2部構成になっており、第1部では細菌兵器が事故で流出したことにより、世界中で当時35億人の人類や動物たちが次々と死んでいく様子が描かれます。本作に登場するMMウイルスは宇宙から採取されたというSF設定ですが、新型コロナウイルスを経験した身としては、瞬く間に世界中に広がっていく感染力はかなりリアルだった感じました。また、細菌学についての説明に相当な分量が割かれており、知識量に圧倒されてしまいます。科学は繁栄に役立つこともあれば戦争に使われることもあるというテーマも一貫して描かれていました。それらの問題は、60年経った現在でもウイルスが防げないのと同様に、今でもあまり変わっていない気もします。

 そして第2部では、人類最後の生存圏となった南極で、世界の終わりの後も生き延びようとする人々の姿が描かれます。分量的には第1部の半分くらいしかありませんが、ここからの展開は前半を上回るほど面白く、さらなる波乱が彼らを襲うことになります。膨大な科学描写も伏線の一つになっており、最後のオチも皮肉が効いていて印象深かったです。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。