本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『薔薇の名前』紹介

 こんにちは。

 「秋と言えば」シリーズ、最後はもちろん読書の秋。10月27日~11月9日は「読書週間」でもあります。本を読むのにぴったりの秋の夜長には、せっかくなら「本についての本」を読むのはいかがでしょうか。

 というわけで、11月のテーマは『読書』です。

 あなたが絶対に知るべき唯一のものとは、図書館の場所である。

アルベルト・アインシュタイン(ドイツ生まれの物理学者/1879-1955)

 さて、今回はウンベルト・エーコさんの『薔薇の名前』を紹介します。

 

 

〇あらすじ

 修道士のウィリアムと弟子のアドソはメルクの僧院を訪れた。雪に残された足跡から馬の存在を導き出したウィリアムは、修道院長から文書館から細密画家が転落死したという事件の調査を依頼される。文書館の関係者は非協力的で、翌朝、再び死体が発見されてしまう。

 

「アラユルモノノウチニ安ラギヲ求タガ、ドコニモ見出セナカッタ。タダ片隅デ書物ト共ニイルトキヲ除イテハ」

 

〇感想

 イタリアの記号学者によって書かれた本作。舞台は14世紀の修道会で、いわゆる中世ヨーロッパと呼ばれる時代です。悪魔の存在が公然と信じられていた時代に、奇怪な殺人事件の解明にウィリアムらが挑みます。冒頭の前書きによると、この物語はアドソが後年に残した手記を元にしているという、随分と凝った設定になっています。作中でも主人公たちは、誰かと出会うたびに宗教的な議論を吹っ掛けられることになります。そうしたキリスト教的な議論や神学的な問いが、分厚い上下2巻の半分以上を占めているのですが、正直に言うと不勉強な私にとっては力不足を痛感しました。宗教が絶大な力を持っていた中世は、まさにそういう時代だったということなのかもしれません。

 ですが、連続する殺人事件の他にも、謎めいた暗号や複雑で不気味な迷宮、美しくも妖しい女など、魅力的なミステリー要素もたくさん盛り込まれています。本作は7日間の物語で、各章がさらに細かく区切られており、時間経過が分かりやすくなっているのですが、読んでいくにつれて謎が深まっていきます。この焦らされている感じがミステリーを読んでいる醍醐味とも言えますね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。