こんにちは。
「秋と言えば」シリーズ、最後はもちろん読書の秋。10月27日~11月9日は「読書週間」でもあります。本を読むのにぴったりの秋の夜長には、せっかくなら「本についての本」を読むのはいかがでしょうか。
というわけで、11月のテーマは『読書』です。
今日読める本を明日まで延ばしてはならない。
ホルブルック・ジャクソン(イギリスのジャーナリスト/1874-1948)
さて、今回はヨースタイン・ゴルデルさんの『カードミステリー 失われた魔法の島』を紹介します。
〇あらすじ
お父さんとぼくは、居なくなったママを探しにギリシャへと車を走らせていた。ぼくは不思議な小人からはルーペを、パン屋のおじいさんからは豆本の入ったパンをもらう。お父さんの哲学的な話を聞きながら、ぼくはこっそりと豆本を読み進める。そこには、200年前に続く不思議な物語が記されていた。
「人間の頭脳が、人間にわかるほど単純だったら、何もわかるはずがない」
〇感想
本書はジョーカーを含めたトランプになぞらえて、53の小節に分けられています。それぞれの話にもトランプを匂わせる表現が多く登場し、どことなくルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を連想させます。本作の構造はかなり緻密に計算されており、豆本の中のルートヴィヒの話はぼくとお父さんを取り巻く環境と似ており、さらにルートヴィヒが聞いたハンスの話も似ており、さらにまた200年前のフローデの話があって、といった感じで、いわゆる入れ子構造になっています。不思議の世界に迷い込んだアリスのように、読者もどんどんと謎の中に入り込んでいきます。
また、そうしたファンタジー的な要素に加えて、「人間はどこから来てどうして生きているのか」といった哲学的な問題にも関わってくるのが本作の特徴です。著者のゴルデルは作家になる前に哲学の教師をしていたそうで、本作では哲学的な問題がファンタジーにうまく溶け込んでいます。本作に登場するぼくやお父さんのように、簡単には答えが出ない問いを考えるのが好きな人なら、よりこの作品を楽しめるのではないでしょうか。私たちも疑問を忘れない「ジョーカー」でありたいですね。
ここまで読んでくださってありがとうございました。