本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『夢見る帝国図書館』紹介

 こんにちは。

 「秋と言えば」シリーズ、最後はもちろん読書の秋。10月27日~11月9日は「読書週間」でもあります。本を読むのにぴったりの秋の夜長には、せっかくなら「本についての本」を読むのはいかがでしょうか。

 というわけで、11月のテーマは『読書』です。

 本の無い家は窓の無い部屋のようなものだ。

ハインリヒ・マン(ドイツの作家/1871-1950)

 さて、今回は中島京子さんの『夢見る帝国図書館』を紹介します。

 

 

〇あらすじ

 フリーライターをしながら小説を書いているわたしは、上野公園のベンチで喜和子さんに出会い、図書館についての小説を書くように言われる。喜和子さんにとって特別な思い入れがあるという上野の図書館は、彼女の半生とも深く関わっていた。

 

 もし、図書館に心があったなら、樋口夏子に恋をしただろう。

〇感想

 自由奔放なようでいて、どこか謎めいている喜和子さん。本作は、かつて帝国図書館と呼ばれていた上野にある図書館の歴史を辿りながら、喜和子さんの過去の謎に迫っていきます。福沢諭吉が提唱して作られたものの、蔵書が全くなかったという東京書籍館から始まる図書館の歴史は、それだけでもすごく読みごたえがありました。戦前は幸田露伴夏目漱石といった名だたる文豪たちがこぞって通い、その後も度重なる戦争に翻弄されながらも開館し続けました。図書館”が”樋口一葉”に”恋をしたり、黒豹が脱走して象の花子と会話したりと、歴史を題材としながらユーモラスな展開もあって読者を飽きさせません。実際に起きた事件や文豪たちの残した作品から、ダイナミックな物語を生み出す想像力が素晴らしかったです。

 上野と言えば動物園や博物館が有名ですが、図書館は行ったことがありませんでした。こんなに面白い歴史がある図書館なのに、私は恥ずかしながら何も知りませんでした。たまに大きい図書館に行くと、意外と人がたくさんいるなと思うことがあります。世間では読書離れと言われつつも、わざわざ図書館に行くという人は思ったよりもいるみたいです。上野の図書館にもいつか行ってみたいですね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。