本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『さがしもの』紹介

 こんにちは。

 「秋と言えば」シリーズ、最後はもちろん読書の秋。10月27日~11月9日は「読書週間」でもあります。本を読むのにぴったりの秋の夜長には、せっかくなら「本についての本」を読むのはいかがでしょうか。

 というわけで、11月のテーマは『読書』です。

 良い本は私の人生におけるイベントである。

スタンダール(フランスの小説家/1783-1842)

 さて、今回は角田光代さんの『さがしもの』を紹介します。

 

 

〇あらすじ

 18歳のときに古本屋に本を売った。その後、大学の卒業旅行で行ったネパールで再びその本を見つける。(『旅する本』)

 恋人と行ったタイでマラリアに感染してしまう。療養中の暇つぶしを探していると、なぜか片岡義男星新一の文庫本を見つける。(『だれか』)

 出発直前に恋人と喧嘩し、一人で伊豆へやってきた。旅館のテレビ台の引き出しには詩集が入っており、そこには手紙が挟まれていた。(『手紙』)

 一人で自分のものとハナケンの荷物を仕分けているわたし。二人は本の趣味がそっくりだった。(『彼と私の本棚』)

 初めてできた恋人が、私の部屋にあった私のものではない本を読んでいた。その後なぜか私には不幸な出来事が続く。(『不幸の種』)

 色々な男を家に上げて一緒に寝るわたし。いろいろな人が買って書き込みをしては売るという伝説の古本の話を聞く。(『引き出しの奥』)

 新人賞の授賞式、ぼくは見知らぬ人たちに囲まれながら、岩壁のように本が積みあがったミツザワ書店とそこにいるおばあさんのことを思い出していた。(『ミツザワ書店』)

 入院中の祖母から、誰にも内緒でとある本を探してほしいと頼まれる。(『さがしもの』)

 初めてのバレンタイン、中原千絵子は初めての恋人に自分が一番好きな本を贈りたいと思う。(『初バレンタイン』)

 

〇感想

 本書には、本にまつわる短めの話が9つ収録されています。中でも全体的に男女の別れ話が多かった印象です。角田光代さんの作品は初めて読んだのですが、もしかして角田さんの好きなテーマなのかもしれませんね。読書好きという共通の趣味を持っていても別れはやってくるもの。合わないなら読まなければいい本とは違い、人間と別れる場合は大抵こじれます。本作の登場人物たちにも紆余曲折ありますが、最終的には自分なりの答えを見つけます。それが話のオチにもなっているので、一つずつさらっと読めて楽しめました。

 個人的には『旅する本』と『手紙』が印象に残りました。『旅する本』は、何度手放しても再会する不思議な本の話で、本当にそんな経験があったらおもしろそうだと思いました。『手紙』は、伊豆の旅館に残されていた本に挟まっていた手紙の話で、そんな情景がなんとなく浮かびそうです。私は普段自宅とか図書館とか電車の中とかで読書することが多いのですが、本作を読んでお気に入りの本を持って旅に出たくなりました。旅先で読むことでまた違った体験ができそうですね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。