本をめぐる冒険

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『ハロウィン・パーティ』紹介

 こんにちは。

 今日10月31日はハロウィンです。本場アメリカやイギリスでは、仮装した子供たちが「トリック・オア・トリート」と尋ねて回ったり、各家庭でハロウィンパーティーを開催したりします。それに対して、日本ではいろいろな所でハロウィン商戦が行われたり、仮装した人たちが集まりすぎて騒動になったりと、子供よりもむしろ大人の方が積極的な気がしますね。

 今日は、アガサ・クリスティーさんの『ハロウィン・パーティ』を紹介します。楽しいハロウィン・パーティで起きた恐ろしい殺人事件の謎に、名探偵エルキュール・ポアロが挑みます。

 

〇あらすじ

 ミステリ作家のアリアドニ・オリヴァは、ティーンエイジャーのためのハロウィンパーティに参加する。最中、参加者の一人であるジョイスが「殺人を見た」と言い出した。皆は虚言癖を疑っていたが、会の終了間際にジョイスがバケツに首を突っ込んで死んでいるのが発見される。オリヴァは友人のエルキュール・ポアロに出馬を求める。

 

「あなたは美を求めている」とエルキュール・ポアロは言った。「いかなる犠牲をはらってでも、美を。わたしとしては、求めているのは事実です。つねに、事実です。」

 

〇感想

 物語は、オリヴァがウドリー・コモンで行われるハロウィンパーティーの準備に参加するところから始まります(と言っても彼女は喋ったりりんごを食べてばかりで役に立ちませんが)。パーティはティーンエイジャーのためのもので、箒の柄競争、小麦粉切り、リンゴ食い競争、スナップドラゴンといったたくさんのゲームが企画されていました。日本のハロウィンとはやはり別ものみたいです。イギリスのハロウィンパーティで、小学生のお楽しみ会的なゲームをこんなにやるというのは知りませんでした。

 事件はパーティ終了間際に起こりました。ジョイスという少女が、リンゴ食い競争の水が入ったバケツに顔を突っ込まれて死亡しているのが発見されます。ハロウィンというイベントも相まって、より不気味な雰囲気です。翌日、オリヴァの要請を受け、ポアロが捜査に乗り出します。パーティの最中、ジョイスは「自分は人が殺されるのを見た」と言っていました。皆が彼女の虚言癖だと疑う中、ポアロはかつてウドリー・コモンで実際に殺人があったのではないかと思い、過去の事件を調べていきます。後半はハロウィンはあまり関係なくなり、関係者の話を聞きながら隠された人間関係が明かされていきます。無関係と思われた過去の事件が鮮やかにつながっていくところは、流石ミステリーの女王といった手際でした。

 本筋とは関係ないですが、作中でオリヴァの口から現実の人物をモデルに創作することについて語られます。現実の人物と親しくなりすぎるとモデルにできなくなるというのは、なんとなく分かります。ひょっとしてクリスティー本人もそうだったのでしょうか。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。