本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『がんばっていきまっしょい』紹介

 こんにちは。

 突然ですが、秋と言えばスポーツの秋!気持ちのいい秋空に過ごしやすい気温、身体を動かすにはもってこいの季節になりました。

 と言うわけで、10月のテーマは『スポーツ』です。

 全国高等学校体育連盟によると、令和4年のボート部の部員数は男子が2864人、女子が1651人でした。高校生全体では約300万人なのでおよそ0.15%、だいたい660人に1人がボート部に所属していることになります。ボート部は人口密度よりも都道府県による偏りが顕著で、戸田ボート場もある埼玉、大きな湖のある静岡や滋賀、京都、瀬戸内海に面する愛媛など、やはり水上練習できる環境を備えているところが盛んなようです。日本で二番目に大きい霞ケ浦を有し、太平洋にも広く面している茨城が男女ともに一桁しか部員がいないのは、個人的に謎です。

 さて、今回は敷村良子さんの『がんばっていきまっしょい』を紹介します。松山東高校を舞台に、たった一人から始まった女子ボート部の奮闘を描きます。

 

 

〇あらすじ!

 松山東高校に入学した悦子はボートをやりたいと思うが、女子ボート部は廃部になっていた。男子の練習の手伝いをしながら部員を集め、女子ボート部を立ち上げる。ろくに練習もせずに挑んだ新人戦は、試合にもならない恥ずかしい結果に終わってしまう。悔しさをばねに悦子たちは心を入れ替えて猛練習に励む。(『がんばっていきましょい』)

 

〇感想!

 競技ボートの中でもナックル・フォアと呼ばれる種目では、舵を取るコックスと4人の漕ぎ手が力を合わせて船を漕ぎます。頭を空っぽにしてオールを漕ぎ続けるボートは、作中では奴隷の競技とも言われています。悦子はたった一人から女子ボート部を再建し、新人戦後は部員たちが同じ気持ちで猛練習に取り組んでいきます。悦子をはじめ作品全体に純粋でエネルギッシュな空気が満ちていて、読んでいて気持ち良かったです。一つのことに一生懸命に取り組む姿はとても美しいですね。2話目の『イージー・オール』では怪我や恋愛といった波乱も待っています。

 また、四国・愛媛のどこかのんびりした空気感と瀬戸内海の海の荒々しさにギャップが感じられて面白かったです。地方を描いた作品はその土地ならではの雰囲気があって面白いですよね。本作に登場する人たちは、皆どこか楽天的なところがある一方で、やると決めたら腰を据えてとことんやるという気風を感じました。著者の敷村さん自身の経験を描いた作品でもあるので、もしかしたら自然が多く温暖な気候の愛媛の県民性なのかもしれませんね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。