本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『スケートラットに喝采を』紹介

 こんにちは。

 突然ですが、秋と言えばスポーツの秋!気持ちのいい秋空に過ごしやすい気温、身体を動かすにはもってこいの季節になりました。

 と言うわけで、10月のテーマは『スポーツ』です。

 全国高等学校体育連盟によると、令和4年のスケードボード部は(少なくとも統計上は)ありませんでした。ですが、2021年の東京オリンピックでは新種目として採用され、多くの若い日本人選手たちの活躍により一躍話題になりましたね。スポーツとしてのマイナーさに加え、狭い日本では練習場所がないことが課題の一つとされています。

 さて、今回は樹島千草さんの『スケートラットに喝采』を紹介します。スケートボードが盛んな街を舞台にスケボーに青春を捧げる若者たちが奮闘する物語で、伝説の選手の死をめぐるミステリー的な要素も含まれているちょっと変わった小説です。

 

 

 

〇あらすじ!

 スケボー施設・ギガントニオでの練習中、爽羽は悪意ある妨害を受けた上に施設を追い出されてしまう。ギガントニオはアラタというスケーターが作ったものだったが、今は彼を憎む竜玄という男が経営していた。居場所を失ったように感じる爽羽だったが、生徒から恐れられている日向という教師から、山の中の廃墟を紹介される。そこは竜玄に逆らうスケーターたちの練習場だった。

 

〇感想!

 物語冒頭で、主人公の爽羽はスケボー施設を追い出され、友人の三島は自身のグラフィティアートを落書きとして消すように警告を受けます。特に日本では、スケボーは野球やサッカーのように公に認められているわけではありません。明確に禁止されているわけではないですが、スケボーは不良少年のアイテムのように扱われることが多く、世間的にはやはり否定されがちです。本作では、スケートボードがあくまでもストリートカルチャーであることがあえて強調されており、それによってこの作品ならではの空気感を醸し出していると思いました。主人公は失った居場所を廃墟の練習場に求めていきます。そこには権力に逆らう若者たちが群れをつくるように集まっていました。学校に居場所を見出せない少年たちの疎外感を、その辺の道路を駆けるスケボーで表現し、自分たちだけの群れをつくる。主人公が自分で居場所に辿り着くのではなく教師に紹介されたり、最後にとある人物があまりにはっきりと明言してしまったりとやや疑問に残る部分はありますが、普通の学校の部活動では味わえないスケボーならではの良さがあって面白かったです。

 本作には同時にミステリー的な要素も含まれており、15年前に起きた天才スケーターの事故死にまつわる謎を追っていくことも、ストーリーの軸の一つとなっています。不可解な死の謎がこれからの展開にどう繋がっていくのか、続きを楽しみにしながら読むこともできるのが良かったです。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。