本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『おとめの流儀。』紹介

 こんにちは。

 突然ですが、秋と言えばスポーツの秋!気持ちのいい秋空に過ごしやすい気温、身体を動かすにはもってこいの季節になりました。

 と言うわけで、10月のテーマは『スポーツ』です。

 全国高等学校体育連盟によると、令和4年のなぎなた部の部員数は女子のみで1483人でした。高校生全体では約300万人なのでおよそ0.05%、だいたい2000人に1人がなぎなた部に所属していることになります。大男の武蔵坊弁慶が使っていたことで有名ななぎなたを、今では女性が振るっているのが不思議と言えば不思議です。

 さて、今回は小嶋陽太郎さんの『おとめの流儀。』を紹介します。前半はなぎなた部の個性豊かな面々が面白く、後半は意外としっかり練られたストーリーが面白い隠れた名作です。

 

 

〇あらすじ!

 目覚ましよりも早く起き、味噌汁を作り、母を起こす。手際のいいさと子は、ゆきちゃんからの部活動見学の誘いを断り、まっすぐ剣柔道場へ向かう。たった一人のなぎなた部である朝子さんからは、あと3人部員を集めないと廃部になると言われる。

 

〇感想!

 長野の中学校のなぎなた部に集まった個性豊かなメンバーが、なぜか剣道部を倒すために奮闘します。その学校では男子は剣道部に、女子はなぎなた部に入るという伝統が存在し、20名以上いる剣道部に対し、なぎなた部は廃部の危機に瀕していました。しかも唯一の先輩である朝子さんは剣道部に対して並々ならぬ因縁があり、経験者のさと子と初心者のゆきちゃん、井川さん、かよちゃん、岩山君は、巻き込まれる形で剣道部との対決に向けて練習に励むことになります。軽妙な語り口と連発されるギャグが面白く、サクサク読むことができました。

 中学生のなぎなたは2メートル10センチから35センチの長さで、防具は5キロもします。また、剣道と同じ面、胴、小手に加えて、すねを打っても有効です。得物の長さも相まって女性でも剣道の有段者と互角以上に戦えるというのが面白いですね。そしてなぎなたの最大の特徴は、女性の武道であると位置づけられていることです。そのことがさと子や朝子さんが「なぜなぎなたをやるのか」というストーリーの核心にも深くつながっており、最後にタイトルの意味も回収する構成のうまさや自然な話運びが光っていました。マイナースポーツだと競技の紹介が中心になってしまいそうですが、読み物として文句なしに面白かったです。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。