本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『凛の弦音』紹介

 こんにちは。

 突然ですが、秋と言えばスポーツの秋!気持ちのいい秋空に過ごしやすい気温、身体を動かすにはもってこいの季節になりました。

 と言うわけで、10月のテーマは『スポーツ』です。

 全国高等学校体育連盟によると、令和4年の弓道部の部員数は男子が2万9233人、女子が3万6200人でした。高校生全体では約300万人なのでおよそ2%、だいたい45人に1人が弓道部に所属していることになります。実は剣道や柔道よりも部員数の多い弓道。武道の中でも特に礼儀作法に厳しく、立ったまま禅を行う「立禅」であるとも言われます。弓道女子、凛々しくていいと思います。

 さて、今回は我孫子武丸さんの『凛の弦音』を紹介します。弓道部に所属する弓道女子が謎に挑むミステリー小説となっています。

 

 

〇あらすじ!

 参段試験で思ったような射ができなかった凛は、棚橋先生の家へ報告に向かう。凜は先生の家で射の練習をしていたが、部の先輩からは棚橋先生に迷惑を掛けないようにと忠告を受ける。土曜日、棚橋先生の家に向かうとパトカーが止まっていた。射場で喉に矢が突き刺さっていた男が発見されたという。

 

〇感想!

 本作は連作短編集のような形式で、高校の弓道部を舞台とした物語に加えてミステリー的な要素も含まれています。1話目からいきなり殺人事件が発生しますが、それ以降は日常ミステリーが中心、後半は謎解きよりも弓道に重きが置かれているなど、1冊で様々な展開を味わうことができます。ミステリーとしてはやや物足りなさを感じるものの、主人公の凛が悩みながらも弓道と向き合っていく青春小説としても楽しめ、読後感もさっぱりとして爽やかでした。

 本作を読んで、弓道はメンタル的な部分が大きいのだなと感じました。正射必中、的に中るかどうかよりも正しく射を行えたかどうかが重視されます。昇段試験でも2射とも的中させたのに落ちる人もいれば、1射しか中らなくても昇段できる人がいるそうです。また、的に「中てる」のではなく「中る」のだとも言われています。まさに「立禅」にふさわしく、究めれば本当に悟りでも開けそうです。相手と競い合うというよりは、自分自身との戦いという感じでしょうか。いかに自分の内面と向き合うのかが重要になりそうです。男子よりも女子の方に人気が高いのもそのあたりに理由がありそうですね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。