本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『武士道シックスティーン』紹介

 こんにちは。

 突然ですが、秋と言えばスポーツの秋!気持ちのいい秋空に過ごしやすい気温、身体を動かすにはもってこいの季節になりました。

 と言うわけで、10月のテーマは『スポーツ』です。

 全国高等学校体育連盟によると、令和4年の剣道部の部員数は男子2万513人、女子1万2341人でした。高校生全体では約300万人なのでおよそ1%、だいたい100人に1人が剣道部に所属していることになります。命を賭けた武士の剣術から発展した剣道。数あるスポーツの中でも、剣道は「スポーツ」であると同時に「武道」でもあることを重視している気がします。

 さて、今回は誉田哲也さんの『武士道シックスティーン』を紹介します。武士のような少女とおっとりした少女が出会い、互いに成長していく物語です。

 

 

〇あらすじ!

 新面武蔵を心の師と仰ぎ、五輪の書を愛読する磯山香織は、全中準優勝という輝かしい実績を持つ実力者。そんな彼女が市民大会の4回戦で綺麗な正面打ちを食らい、まさかの敗北を喫する。雪辱に燃える香織は、対戦相手の「甲本」が進んだと思われる高校への進学を決める。

 

〇感想!

 とにかく香織のキャラが立っていました。彼女は宮本武蔵を心の師としており、剣道に全てを捧げています。その徹底っぷりはかなりのもので、勝負は斬るか斬られるか、自分以外は全てが敵と思い込んでいます。心の声まで武士口調。ただ猛烈な負けず嫌いな自意識過剰で、そのあたりは普通の16歳らしい気もしました。そんな奴いないだろと突っ込みたくなりますが、だからこそ物語をぐいぐい引っ張っていってくれます。

 そんな香織に、周囲の人々は否応なしに巻き込まれていきます。うっかり香織を破ってしまった「甲本」こと西荻早苗もその一人。勝負にはあまり執着しておらず、純粋に剣道が楽しいからやっている感じです。性格もおっとりしていて、香織とは真逆。彼女にライバル認定されてからは防具もつけずに竹刀でどつかれたり、手を踏みつけられたりと散々な目に合っています。それでも香織と仲良くなれるあたり、早苗の器の大きさを感じます。

 二人は同じ剣道部に所属し、主に香織が早苗をいじめる形で次第に交流を深めていきます。後半では「なぜ剣道をやるのか」というところにまで踏み込んでいくのですが、そこが一番読みごたえがあって面白かったです。前半のテンションからの落差に笑いつつも、香織や早苗の家族関係や過去も絡めながら見事に収束していくのにいつのまにか引き込まれていました。いくつも伏線が張られていることで、シンプルな結論にも説得力が出てきますね。

 武士道シリーズは、セブンティーン、エイティーン、ジェネレーションと続いていくようです。彼女たちがこれからどう成長していくのか、続きを読んでみたいと思いました。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。