本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『DIVE‼』紹介

 こんにちは。

 突然ですが、秋と言えばスポーツの秋!気持ちのいい秋空に過ごしやすい気温、身体を動かすにはもってこいの季節になりました。

 と言うわけで、10月のテーマは『スポーツ』です。

 全国高等学校体育連盟によると、令和4年の飛び込み部の部員数は男子が29人、女子が48人でした。ただし、水泳部の方に含まれている場合もあり、実際はもうちょっと多いようです。飛込みには怖い、痛いといったイメージが付きまとうためか、競技人口はかなり少ないです。また、飛込みには水深5m以上のプールが必要で、練習場所もかなり限られると思われます。だからこそ、中高生にもオリンピックのチャンスがあるとも言えます。

 さて、今回は森絵都さんの『DIVE‼』を紹介します。美しくも過酷な飛込みの世界で、中高生たちがオリンピックをかけて競い合います。

 

 

〇あらすじ!

 またこんなところにきてしまった。高さ10mの飛込み台の前にきてから、知季は後悔する。着水に失敗すれば身体を強く打ちつけることになる。頭によぎるのは恐怖と痛み。それでも水に受け入れられたときの心地良さは一瞬で全てを忘れさせてくれる。マイナー競技の、経営の傾いたクラブにやってきたのは、勝気でやる気に溢れたコーチの夏陽子。彼女の猫のような目は、知季の中に秘められた最高の才能を見出し、彼に対して中学生としては異例の三回転半に挑むよう告げる。

 

〇感想!

 高さ10mの飛込み台から、時速60キロの速さで飛ぶ。その間、たった1.4秒。その一瞬に魅せられた男の子が、仲間たちと競い合いながら、時に悩みながら成長していく様子が描かれています。飛込みには5m、7.5m、10mの飛込み台から飛び込む「高飛込み」と、1m、3mの弾性のある飛び板から飛び込む「板飛込み」があります。本作では高飛込みの選手たちが物語の中心となります。

 本作には個性豊かな登場人物たちが登場し、物語をリードしてくれます。特に、アメリカ帰りのコーチである夏陽子のパワフルさには、主人公ともども圧倒されます。言いたいことを言ってぐいぐい引っ張ってくれる頼もしさは、案外これまでいなかったコーチ像な気がしますね。高校生の要一と飛沫もライバルであると同時に飛込み仲間といった感じで、互いに高めあっている感じが好きです。

 演技自体はまばたきするほどの間ですが、毎日長時間の練習を繰り返す必要があります。美しい姿勢で演技するために陸上練習をしたり、器具を使って技を再現したりする必要もあります。知季自身も不満を抱えている上に、彼女ともうまくいっておらず、「このときはまだ・・・」みたいな不穏なモノローグまで挟まれます。結果、弟に彼女を取られることになり、それがまさかの第1巻のクライマックスでした。スポーツ小説では厳しい練習か普通の生活かの二択を迫られることが多いですが、児童文学としては斬新すぎる本作の展開には正直言って驚きました。まだ1巻しか読めていないのですが、飛込みの方では報われることを願います。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。