本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『北風 小説 早稲田大学ラグビー部』紹介

 こんにちは。

 突然ですが、秋と言えばスポーツの秋!気持ちのいい秋空に過ごしやすい気温、身体を動かすにはもってこいの季節になりました。

 と言うわけで、10月のテーマは『スポーツ』です。

 全国高等学校体育連盟によると、令和4年のラグビー部の部員数は男子1674人でした。高校生全体では約300万人なのでおよそ0.13%、だいたい750人に1人がラグビー部に所属していることになります。近年急激に注目されているラグビー。2015年のW杯では、南アフリカに歴史的な勝利をして一躍話題になりました。2019年に日本で開催されたW杯では、史上初のベスト8進出。スローガンの「ONE TEAM」は流行語大賞も獲得しています。

 さて、今回は藤島大さんの『北風 小説 早稲田大学ラグビー』を紹介します。著者の藤島さんは早稲田大学ラグビー部出身。日本ではラグビーが大学スポーツとして発展してきたという歴史があり、伝統のある早慶戦早明戦はテレビでも中継されています。

 

 

〇あらすじ!

 福島のツッパリだった草野点は高校でラグビーに目覚め、日本一を目指す早稲田大学ラグビー部に入部する。そこで待っていたのは、想像以上に厳しい練習と無関心なようで優しい先輩たちだった。

 

〇感想!

 副題に「早稲田大学ラグビー部」と入っているように、本作は早稲田大学ラグビー部をそのまま小説化したような作品になります。無骨な感じの独特の文体で、ラガーマンのようながっしりした勢いがありました。

 読み始める前は、ラグビーのために生まれてきたような体格に恵まれた「強者」たちの根性論が展開されるのかなと思っていたのですが、その予想は見事に裏切られました。早稲田のラグビー部にはむしろ「弱者」が多かったのです。早稲田にはほかの私学にあるようなスポーツ推薦枠がなく、入学するには付属高校から進学するか、受験勉強をしっかりやって試験を突破する必要がありました。早稲田と言えば慶応と並んで私大トップクラスの偏差値を誇ります。そのため、高校までラグビー漬けだったような生粋のラガーマンは少なかったのでした。

 そんな「弱者」を練習で「強者」にするというのが早稲田の伝統でした。もちろん練習自体も厳しいもので、特注の器具を使って文字通り血のにじむような練習をひたすら繰り返します。また、「グラウンドを一秒でも歩いてはならない」という掟があり、下級生のうちは練習着の色まで指定されています。ですが、現実の体育会系につきものの無意味な上下関係が存在しません。上級生が下級生を理不尽にいじめることはなく、むしろどうすれば強くなれるのかを教えてくれる校風があるようでした。本作は現実の早稲田ラグビー部を下敷きにしているので、実際の雰囲気にかなり近いのだろうと思われます。

 スポーツ小説を読んでいると、実際の体育会系はこんな爽やかじゃないだろうと思うこともありますが、本作のように校風一つでこんなに変わることもあるのだと思いました。ちなみに「北風」というのは早稲田大学ラグビー部の部歌のことだそうです。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。