本をめぐる冒険

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『怠け数学者の記』紹介

 こんにちは。

 皆さんは「数学」と聞くと、何を思い浮かべますか?多くの人が抽象的で難しいと考える一方、他にはない論理的な純粋さや美しさを感じる人もいたりと、結構好き嫌いが分かれる分野です。また、一般的には小説のような文学とは対極にあるイメージだと思います。ですが、数学を題材とした本というのも実は数多く書かれています。

 というわけで、8月のテーマは『数学』です。

 さて今回は、小平邦彦さんの『怠け数学者の記』を紹介します。小平さんは、「数学界のノーベル賞」と呼ばれるフィールズ賞を日本人で初めて受賞した数学者です。

 

 

〇あらすじ

 日本人で初めてフィールズ賞を受賞した筆者が、専門の数学を始め、初等・中等教育や科学技術について語る。

 

〇数学と物語と

 本書は、一冊の本として出版するために書かれたものではなく、いくつかの雑誌に寄稿・連載した文章を集めたものになります。そのため、本文中に重複している内容がかなりあるのですが、逆にしっかりと考え抜かれたブレのない内容であるとも言えます。

 本書の中でも印象深いのは、「数覚」についての話でした。一般に数学と言えば、あらゆる学問の中でも最も論理的なものというイメージがあります。すべてが理屈で切れ目なくつながっていて、しっかりした理由が存在するもの、と考えてしまいます。しかし筆者によると、耳で音を感じる「音感」のように、数学で物事を捉える「数覚」というものが存在するそうです。数学が感覚的な学問であると言われるとちょっとびっくりしますが、例えば囲碁や将棋のプロがアマチュアの対局を見ただけでその人の棋力を判断することができるようなもので、その道を究めることで身に付く感覚というのはあるのかなと思います。

 また、現代の小学校~高校が受験技術の練習に堕しているというのは、まさにその通りだと思いました。初めに国語や算数など小学生の頃の方が身に付けやすい科目をしっかり身に付け、適齢になってから社会や理科を勉強した方が効率がいいというのは、確かに合理的だと思います。他にも本能的になりがちな政治や科学技術の発展の是非など、社会に対する鋭い洞察も多く、まるで大学で面白い授業を受けているように感じました。

 「ナマケモノになりたい」などのユーモアのある表現も随所にあって、なんとなく小平さんを身近に感じられました。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。