本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『捨てないパン屋の挑戦』紹介

 こんにちは。

 もうすぐ待ちに待った夏休み!夏休みと言えば、宿題の定番である読書感想文

 とは言え、あらためてまとまった文章を書くのはなかなか大変ですよね。ついつい後回しにして、最後に泣く泣くやることになるのはよく聞く話です。元学生の方には、今となっては懐かしい思い出かもしれませんね。

 というわけで、今月は今年(2022年)の課題図書に指定されている作品を読んでいきます。今回は井出留美さんの『捨てないパン屋の挑戦』を紹介します。小学校高学年向けの一作となります。

 

 

 

〇あらすじ

 田村さんは夜明け前の工房でまき窯の炎を見ながらしあわせを感じていた。パン作りとは、小麦のいのちや木のいのちを次へとつないでいくことだった。田村さんは子供の頃はパンがきらいだったが、いろいろな体験から環境問題に関心を持った結果、「捨てないパン屋」にたどり着いたのだった。

 

〇私なりの感想文

 副題には最近流行りのSDGsという言葉が入っていますが、田村さんがただやりたいことをやって結果に行きついた感じで、説教臭さはあまり感じませんでした。

 すごいと思ったのは、田村さんが常に挑戦し続けていることです。初めは就職がうまくいかずにパン屋の修行の修行を始めますが、日本のパン屋のやり方に疑問を持ち、モンゴルへ行っていのちの大切さを学びます。帰ってから実家のパン屋で働き始めますが、毎日大量のパンを捨てている自分に嫌気が差し、本場フランスへ修行へ行きます。天然酵母とまき窯を売りにしますが、今度はプライドを傷つけられた父や職人が辞めてしまい、田村さんは一人で何十時間も働くことになってしまいます。環境に配慮しながらも働き続けることができるパン屋を目指して、再びフランスへ向かいます。そこで今度はパン屋の働き方を学び、今では田村さんの店では一つもパンを廃棄することがないそうです。何度失敗しても、田村さんは諦めずに挑戦し続けます。なかなかに波乱万丈な人生で、飽きずに最後まで読めました。

 日本とフランスにおける価値観の違いも興味深かったです。日本では品質管理のために毎日大量の食品が廃棄されています。しかし、フランスでは少しくらい形の崩れたパンや焦げ付いたパンでも、商品として普通に売り出すそうです。また、日本では長時間労働が当たり前のようですが、フランスのパン屋では昼過ぎにはほとんどの仕事を終えてしまうそうです。さらに、農業大国のフランスでは有機小麦を使うことが普通だそうですが、食料自給率の低い日本では費用を抑えるためにはなかなか手が出せないのが現状です。こういうとき、海外では良くても日本ではうまくいかないよとすぐに諦めてしまいがちです。田村さんのようにそれらをしっかりと取り入れるのはなかなかできることではないと思いました。「捨てないパン屋」というタイトルに反して、日本での常識や積み重ねてきた過去は結構あっさりと捨てているところは、なんだか面白いですね。

 また、個人的になるほどと思ったのは「買い物は投票である」という考え方です。消費者が値段が少し高くてもいいものを買っていけば、供給側も潤って次第に値段が安くなっていきます。公的な選挙で何かを変えようとするのは難しいですが、買い物は誰もが毎日しなければならないことですし、相手も生活がかかっているので反応せざるを得ません。選挙ももちろん大切ですが、社会を変える方法は一つではないのだなと思いました。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。