本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『チョコレートタッチ』紹介

 こんにちは。

 もうすぐ待ちに待った夏休み!夏休みと言えば、宿題の定番である読書感想文

 とは言え、あらためてまとまった文章を書くのはなかなか大変ですよね。ついつい後回しにして、最後に泣く泣くやることになるのはよく聞く話です。元学生の方には、今となっては懐かしい思い出かもしれませんね。

 というわけで、今月は今年(2022年)の課題図書に指定されている作品を読んでいきます。今回はパトリック・スキーン・キャトリングさんの『チョコレートタッチ』を紹介します。小学校中学年向けの一作となります。

 

 

〇あらすじ

 ジョン・ミダスは何よりもおかしが大好き。おかしばかり食べているジョンに、両親はもっといろいろなものを食べるように言うが、聞く耳を持たない。ある日、ジョンは不思議なおかし屋でチョコレートを買う。それ以来、ジョンが口にしたものはすべてチョコレートに変わるようになった。初めは喜んでいたジョンだったが・・・。

 

〇私なりの感想文

 お菓子大好きな男の子が、口にするものがすべてチョコレートになってしまう話です。読みながらどこかで聞いたことがあるなあと思っていたら、ギリシャ神話に触れた者が金になってしまう王様の話があってそれをモデルにしているそうです。調べてみると、ミダス王は『王様の耳はロバの耳』に出てくる王様でもあるようです。強欲で見栄っ張りな王様だったみたいですね。

 本作は全体的にユーモアあふれる表現が多くて面白く読めました。訳文もすっきりしていて子供でも読みやすくなっています。個人的に小学生に「胃酸過多」を書かせるのが洒落が利いていると思いました。

 どれだけチョコレートが好きでも、あらゆる食べ物がチョコレートになってしまうのはさすがにイヤになってしまいます。水までチョコレートに変わってしまうのは、想像するだけで喉が渇いてきます。ついにジョンは、あれだけ嫌いだったトマトやレタスを食べたいと思うようになりました。そのあたりの心理描写が抜群に面白かったです。

 なんとなく皮肉っぽさもある感じに、私は芥川龍之介の『芋粥』を思い出しました。芋粥を飽きるほど食べてみたいと思っていた五位は、本当に目の前に大量の芋粥が用意されると、たった一杯食べただけでお腹いっぱいになってしまいます。好きなものはめったに食べられないからこそ幸福を感じられるようです。食べたいと想像しているときのほうが幸せを感じるのかもしれません。不思議なことにも思えますが、それは海外でも日本でも同じようですね。

 全編を通してコメディらしさに溢れていてるので、感想文は普通に面白かったところを書くだけで良さそうです。他にも、ある日自分が好きなもの以外は食べられなくなったらどうするか、想像するのも面白そうですね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。