本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『みんなのためいき図鑑』紹介

 こんにちは。

 もうすぐ待ちに待った夏休み!夏休みと言えば、宿題の定番である読書感想文

 とは言え、あらためてまとまった文章を書くのはなかなか大変ですよね。ついつい後回しにして、最後に泣く泣くやることになるのはよく聞く話です。元学生の方には、今となっては懐かしい思い出かもしれませんね。

 というわけで、今月は今年(2022年)の課題図書に指定されている作品を読んでいきます。今回は村上しいこさんの『みんなのためいき図鑑』を紹介します。小学校中学年向けの一作となります。このあたりから絵本から児童文学になり、文章が多くなってきます。

 

 

〇あらすじ

 たのちんは気が強い小雪から、班で作る「オリジナル図鑑」を何にするかを考えてくるように押し付けられる。同じ班で保健室に通う加世堂さんのところへ行き、事情を話す。たのちんが思わずためいきをつくと、加世堂さんはノートにためいきこぞうの絵を描いた。その夜、ノートに書かれたためいきこぞうが動き出したのを見て、ためいき図鑑を作ることを思いつく。図鑑の絵は加世堂さんに描いてほしかったが、小雪が描きたいと言い出して・・・。

 

〇私なりの感想文

 絵本から児童文学になり、文章量が激増します。ですが本作は関西弁なので全体的にリズムがよく、すらすら読めるので安心です。

 関西弁のせいなのか、たのちん以外は言いたいことをハキハキ喋る雰囲気でした。対してたのちんはすごく周りに気をつかう優しい子でした保健室登校の加世堂さんにも参加してもらいたい一方で、小雪のこともちゃんと考えて悩みます。ですがその性格を利用されている面もあるのがつらいところです。小雪には仕事を押し付けられ、加世堂さんのことを相談した七保やコーシローはあまり協力してくれませんでした。結局板挟みになり、ひとり問題を抱え込むことになります。どんな悩みも突き詰めれば人間関係になると言います。それはためいきも出るというものです。

 本作にはためいきこぞうのイラストが動き出すファンタジックな部分もあります。たのちんのためいきこぞうは開き直ったサバサバした性格をしています。ためいきこぞうはなぜかダンス集会をやっているのですが、小雪と加世堂さんのためいきこぞうは仲良しでした。ためいきこぞうが本体の性格と違っているのは面白いですね。もしかしたら、ためいきには現状に対する不満のようなものが込められているのかもしれません。

 感想文ですが、たのちんが小雪にも加世堂さんにも気を遣って動いているのを見てどう思ったか、自分だったらこういう時にどうするかを書くのが良さそうです。もしくは自分ならどんなときにためいきをつくか、あるいはどんな図鑑を作ってみたいかなどから広げていっても面白そうです。ためいきをつくときは無意識のことが多いので、意識してみると面白そうですね。結構いろんな場面でためいきをついていそうな気がします。また、作中では「ためいきをつくとしあわせが逃げる」という説と「ためいきはおならと一緒でがまんすると体によくない」という説が出てくるのですが、実際はどっちなのでしょうか。他の人のためいきを聞くとこっちの気分も落ち込むとも言います。そのあたりを考えても面白そうですね。

 本作はたのちんの母親のみの登場でした。それどころか担任の先生も保健室の先生も女性で、加世堂さんの母親も出てきて、たのちんは小雪と加世堂さんの板挟みになるなど、登場人物はほとんど女性ばかりでした。ためいきこぞうの性別は本体と一緒みたいでした。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。