本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

『すうがくでせかいをみるの』紹介

 こんにちは。

 もうすぐ待ちに待った夏休み!夏休みと言えば、宿題の定番である読書感想文

 とは言え、あらためてまとまった文章を書くのはなかなか大変ですよね。ついつい後回しにして、最後に泣く泣くやることになるのはよく聞く話です。元学生の方には、今となっては懐かしい思い出かもしれませんね。

 というわけで、今月は今年(2022年)の課題図書に指定されている作品を読んでいきます。今回はミゲル・タンコさんの『すうがくでせかいをみるの』を紹介します。小学校低学年向けの一作となります。

 

 

〇あらすじ

 パパはえが好き。ママはむしが好き。おにいちゃんはおんがくが好き。そしてわたしは、すうがくでせかいをみるの。

 

〇私なりの感想文

 とにかく絵が独特で印象的な絵本でした。きわめて短い文章と味のある絵ですべてを表現する、絵本ならではの特性を生かした素晴らしい出来だったと思います。

 テーマは「好きなもので世界を見ること」という非常にシンプルなものです。「世界を見る」とは、それを使って身の回りのものを考えるといったような意味になります。数学で世界を見るわたしは、紙飛行機を飛ばすときも数学によって軌道を見出します。同じ紙飛行機でも、例えば絵が好きなパパならデザインにこだわるかもしれませんし、虫が好きなママなら虫っぽい折り方?にするかもしれません。好きなものだから自分からどんどん学んでいけますし、とことんつきつめていくこともできます。

 ですが、それはある意味では大人にも難しいことです。「絶対にこれが一番好き」と胸を張って主張できるものを改めて聞かれると、正直選ぶのが難しいですよね。自信がなくて人には言えなかったり、もっとすごい人がいるからと保身的な言い訳したりすることもあります。それどころか、「アレが苦手」とか「コレが嫌い」とかマイナスな面ばかりに注目しがちです。特に人の目を気にしがちな日本人は、自信のない人が多そうです。

 でも本来は「好き」ってそういうものではないんですよね。他人と比べてどうこうするものではなく、もっとシンプルな「気持ち」の問題なんだと思います。他人にどう思われようとも、自分がただ「好き」だから「好き」。嫌いな物には理由がありますが、本当に好きなものには理由はありません。だからこそ、何かを極めている人はみんな自信に満ち溢れていますし、見ていてもカッコいいです。

 もし感想文を書くのなら、純粋に「自分が好きなものは何だろう?」と考えて書くことになると思います。好きだからこういうことをよくする、こんな風になりたい、といった風に、具体的に広げていくのがいいのかな?本作のように、お父さんはこれが好き、お母さんはあれが好き、とみんなが好きなものを挙げていくのも良さそうですね。

 今回意外に思ったのは、小学生らしい主人公は「さんすう」ではなく、「すうがく」が好きなことですね。日本では小学校で習う日常的な「算数」と、中学校以降で習う専門的なものも含む「数学」は、明確に使い分けられています。調べてみると、英語では「算数」も「数学」も区別せずに「Mathematic」を使うみたいです。本当に好きなものなら、「算数」という教科名ではなく、もっと一般的に「数学」として好きという意味でこの訳になったのかもしれませんね

 ここまで読んでくださってありがとうございました。