本をめぐる冒険

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坂口版『織田信長』紹介

 こんにちは。

 天正10年6月2日(新暦に直すと1582年6月21日)は、本能寺の変が起こった日です。織田信長は家臣である明智光秀の謀反により、天下統一を目の前にしてその生涯を閉じることとなりました。信長といえば、好きな歴史上の人物ランキングなどで1位に輝くことが非常に多く、その人気は数多の歴史的英雄の中でも極めて高いです。なぜ信長はそれほどまでに人気があるのでしょうか。今月はそんな魅力的な英雄・信長が登場する小説を読んでみたいと思います。

 1548年(天文17年)、信長は隣国美濃の斎藤道三の娘である濃姫と結婚します。この結婚は政略結婚であり、尾張と美濃の和睦の証を意味していたと考えられています。当時信長は16歳、濃姫は当時17歳で実は姐さん女房でした。

 さて、今回紹介するのは、坂口安吾さんの『織田信長』です。タイトル通り、織田信長のエピソードを描いた作品です。歴史小説というよりも、エピソードを並べていって信長像について考察を進めていく随筆のような感じです。ちなみに未完成の作品となります。

 

 

〇あらすじ

 立入左京亮が朝廷の使者として綸旨を持って信長を訪れた。それは朝廷の困窮ぶりを訴える借用状のようなものだったが、信長は他人から認められることで自信をつけることができたのだった。

 

信長の魅力、ここにあり!

 著者はさらに考察を進めます。信長像を読み解くカギは何か。その根底にある考えは、「死のふは一定~」という小唄や、有名な「人間五十年~」の舞に表れています。人間は必ず死ぬもの、だからこそいつ死んでもいいように常に命を懸けて生きていたのでした。人から奇行と思われることであっても、信長にとってはただ自分の生に命を懸けているだけのことでした。
 蛇の住むという池に飛び込んで伝説を確かめたといった、あまり知られていない話なども混ぜつつ、多くのエピソードを挙げて信長像を考察しているのが面白かったです。信長の自信家に見える面が実は不安の裏返しだったというのもすごく逆説的で、筆者の『堕落論』を思い出しました。
 ここまで読んでくださってありがとうございました。