本をめぐる冒険

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世界一の名探偵が挑む競走馬の誘拐事件『白銀号事件』紹介

 こんにちは。

 今年5月29日には日本競馬界でも最も特別なレース・日本ダービーが開催されます。今月はそれにちなみ、『』まつわる本を読んでいきたいと思います。

 1992年の第59回日本ダービーで逃げ切り勝ちを収めたのはミホノブルボンでした。当初は血統から中距離以上を走り切れるか不安視されていましたが、前評判を覆して無敗での二冠を達成。戸田調教師により当時始まったばかりだった坂路での調教が行われ、その強さから「坂路の申し子」と呼ばれました。三冠目を狙うも菊花賞ではライスシャワーに敗北、その後はケガにより引退となり種牡馬入りしました。

 さて、今回紹介するのは、コナン・ドイルの『白銀号事件』です。世界一有名な名探偵であるシャーロック・ホームズものにも競走馬にまつわる事件が出てきます。イギリスと言えば近代競馬発祥の地。また、19世紀と言えばまだ馬車が使われており、現代よりも馬との距離が近かった時代でもありますね。

 ミステリー作品なのでネタバレには注意して書いていきます。

 

 

〇あらすじ

 ワトスンはホームズとともにキングズ・パイランドに向かう。列車の中でイングランド中を騒がせている事件の内容を聞かされる。それは、イングランド随一の名馬・白銀号が失踪し、その調教師が死体となって発見されたというものだった。

 

〇この馬がすごい!

 こちらのページによると、イギリスにおいて初めて近代競馬が行われたのは1539年のようです。その後サラブレッドの血統書の仕組みやステークス方式での競争が行われることとなり、ダービーが創設されたのも1780年のことでした。ホームズが活躍した19世紀にはすでに近代競馬の基礎が確立していたようです(日本での本格的な競馬は同時期の1867年)。近代競馬発祥の地であるイギリスにおいては、競馬はギャンブルというよりもスポーツとして認識されており、国内での競馬人気はかなり高いようです。

 そんな馬を愛する国イギリスで、ウェセックスカップの1番人気・白銀号が突如失踪してしまうのが今回のお話です。白銀号はその名の通り、額の白い流星が特徴の五歳馬。出走するたびに勝利しており、まだ一度もファンを失望させていないとあるので、もしかしたら無敗だったのかもしれません。さらに調教師であったジョン・ストレーカーが死んでいるのが発見されます。事件は新聞を賑わせるもののあまり進展せず、要請を受けたホームズの出馬となります。

 子供の時以来久しぶりに読んだのですが、ホームズが独自の捜査方法を駆使してあっという間に真相に迫るといういつもの面白さがあり、この事件の特徴として競走馬ならではのトリックがあって面白かったです。エロやグロといった要素もなく、探偵小説としての純粋な面白さが味わえるところがホームズの魅力ですね。昔読んでいた懐かしさ補正もありますが、さすが世界一有名な名探偵だなと思いました。

 また、ホームズと言えば移動手段として馬車が頻繁に登場します。中でも、「金貨をはずんでやるから」といって馬車を急がせるシーンが印象に残りますね。もっとも、今回はロンドンからかなり遠いダートムーアが舞台なので、馬車ではなく列車に乗って移動しています。イギリスは世界で初めて蒸気機関車が開通した国でもあり、この時代の大英帝国の栄光を感じました。


 ちなみに本作が収録されている『シャーロック・ホームズの思い出(回想)』には他にも、ホームズが生涯初めて手掛けた事件である「グロリア・スコット号」や、探偵となったのちの最初の事件である「マスグレーヴ家の儀式」といった、少し変わった設定の短編が収められています。もし読んだことがない人がいたら、初めは『緋色の研究』か『冒険』、その次くらいに『思い出』を読むとより楽しめると思います。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。