本をめぐる冒険

読んだ本の感想などを書いてみるブログ。

最新のベストセラーは? ~歴代ベストセラー⑧2020年

 こんにちは。

 突然ですが、みなさんはベストセラーの本は読みますか?

 ベストセラーランキングの記事もいよいよ最後となりました。

 今回の記事を入れると、1年10冊×8回分の計80冊を見てきました。

 その時代を生きた人にとっては懐かしく感じたでしょうか。もしくは、まだ生まれていなかった人にとっては意外に感じたかもしれません。

 今から考えると「なんで?」と思うような本も、当時はみんなが熱心に読んでいたのだと思います。2020年のベストセラーも遠い未来からすればおかしなランキングなのかもしれません。ですが、どんな本であれ、その時代の人々の心を捉えたことだけは確かです。そうした心の機微をうまく捉えた作家や編集者がベストセラーを生み出すのだと思いました。

 さて、出版科学研究所が発表している各年のベストセラーのランキングを見てみたいと思います。

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Tide HeによるPixabayからの画像

 

 今回は、2020年3月時点で最新となる、2年前の2020年のベストセラーランキングを見てみたいと思います。

 ちなみに、2020年と言えば

  • 新型コロナウイルスが世界的に大流行。緊急事態宣言が出されるなど、生活が一変。56年ぶりとなる東京オリンピックも延期されることに。
  • 飲食店などが軒並み大打撃を受ける一方、リモートワークの拡大による巣ごもり需要が急増しました。

 と、まさしくコロナ一色といった年でした。日々増えていく感染者数に怯えながらいつまで続くのか分からない不安な日々。誰も経験したことがない時代に一体どんな本が読まれたのか、見ていきたいと思います。

 

順位 書名 著者 出版社
1 鬼滅の刃 しあわせの花 吾峠呼世晴(原作)
矢島 綾(ノベライズ)
集英社
2 鬼滅の刃 片羽の蝶 吾峠呼世晴(原作)
矢島 綾(ノベライズ)
集英社
3 鋼鉄の法 人生をしなやかに、力強く生きる 大川隆法 幸福の科学出版
4 鬼滅の刃 風の道しるべ 吾峠呼世晴(原作)
矢島 綾(ノベライズ)
集英社
5 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー ブレイディみかこ 新潮社
6 ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治 新潮社
7 流浪の月 凪良ゆう 東京創元社
8 Sincerely yours… 田中みな実/伊藤彰紀撮影 宝島社
9 人は話し方が9割 松永茂久 すばる舎
10 「繊細さん」の本 武田友紀 飛鳥新社

(出版科学研究所『出版指標年表』より)

 

 と言うわけで、2020年のベストセラーは『鬼滅の刃 しあわせの花』でした。『鬼滅の刃』は吾峠呼世晴さんによるジャンプ漫画で、主人公の竈門炭治郎が妹の禰豆子や鬼滅隊の仲間たちとともに鬼と戦い成長していく物語です。アニメ化を契機に爆発的にヒットし、特に映画の興行収入は400億を超えるなど社会現象にまで至りました。関連グッズも飛ぶように売れ、ランキングにある『しあわせの花』『片羽の蝶』『風の道しるべ』もそうしたノベライズ作品になります。

 5位は『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でした。多種多様な子供たちが集まるイギリスの学校に通う男の子が、母親とともに人種差別やアイデンティティといった問題を乗り越えていくノンフィクションになります。

 6位の『ケーキの切れない非行少年たち』は、非行少年と呼ばれる子供たちの認知能力について扱った新書です。一風変わったタイトルは、彼らがケーキを等分することができないという事実からつけられています。

 7位の『流浪の月』は2020年の本屋大賞受賞作で、映画化も決定しています。誘拐事件の被害者とされた更紗と、善意だったが犯人とされた文が15年ぶりに再会し、二人だけの関係性を築いていきます。

 『Sincerely yours…』はフリーアナウンサーとして活躍されている田中みな実さんの写真集。ちなみに「Sincerely yours」とは手紙やメールの結びの言葉として用いられる英単語で、「真心を込めて」といった意味になります。

 9位の『人は話し方が9割』は、実業家として活躍中の松永茂久さんのビジネス書。コミュニケーションに苦手意識を持っている人は多いですが、同書では特に「会話」が簡単にうまくいく方法について書いています。

 10位の『「繊細さん」の本』もコミュニケーションについての本です。周囲に気を遣い過ぎてストレスを溜め込んでしまう人に対し、繊細な感性のままで生きていく方法を提案しています。

 

 2020年は一目瞭然、まさに鬼滅無双でした。現実世界がコロナ一色となったことと無関係ではなさそうです。一変した生活や先の見えない不安にストレスが溜まる中、炭次郎たちが懸命に戦う姿に共感し、その優しい物語に感動した方が多かったのでしょう。また、映画の大ヒットは客足の減った映画館にとっても救世主となりました。

 コロナウイルスは出版業界にも影響を与えました。外出制限が掛かる中で家でも楽しめる本や漫画の需要が増え、書籍市場は前年比4.8%の増加となりました。特に電子出版は24%も増えたそうです。増加傾向は2021年も続いており、これまで長いこと出版不況と言われていたことを考えるとかなりいいニュースだと思います。

 ソーシャルディスタンスで人との距離を保つようにしなければならない社会の中で、本を通じて他人と繋がることができるのは、素敵なことですね。

 また、ランキングからは『多様性』が重視されているとも思いました。海外の学校に通っていたり、非行少年だったり、コミュニケーションがうまくできなかったり、それぞれの理由から生き辛さを感じる人たちに対し、「そのままでいいんだよ」というメッセージが込められているように感じました。理想を掲げられてそれ以外が否定されるのではなく、ありのままでいいからまずは受け入れて肯定しよう、という価値観の変化があるのだと思いました。

 いつの時代も、自分の居場所を見つけるために本を読むのかもしれませんね。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。