本をめぐる冒険

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70年前に最も売れた本は? 歴代ベストセラー①~1950年編

 こんにちは。

 突然ですが、みなさんはベストセラーの本は読みますか?

 ベストセラーの本はテレビなどでも目にする機会が多いですが、個人的には読む機会がなかったりもします。最も売れた本は世相を反映していることが多い一方、一見すると意外なものがランクインしていることもあり、見ていると面白い発見があります。

 出版科学研究所が発表している、各年のベストセラーのランキングを見てみたいと思います。

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Tide HeによるPixabayからの画像

 今回は70年前の1950年のベストセラーランキングを見てみたいと思います。

 ちなみに、1950年と言えば

 と、敗戦の影響が色濃く出ている時代でした。そんな激動の時代にどんな本が読まれたのか、見ていきたいと思います。

 

順 位 書 名 著 者 出 版 社
1 細雪 谷崎潤一郎 中央公論社
2 潜行三千里 辻 政信 毎日新聞社
3 風と共に去りぬ M.ミッチェル 三笠書房
4 石中先生行状記 石坂洋次郎 新潮社
5 帰郷 大佛次郎 六興出版社
6 チャタレー夫人の恋人 D.H.ローレンス 小山書店
7 きけわだつみの声 日本戦没学生手記編集委員会 東大協同組合出版部
8 少年期 波多野勤子 光文社
9 裸者と死者 N.メーラー 改造社
10 十五対一 辻 政信 酣燈社

(出版科学研究所『出版指標年表』より)

 

 と言うことで、1950年に最も売れたのは、谷崎潤一郎の『細雪』でした。本作は戦前の大阪・船場を舞台とした旧家の4姉妹の生活を描いた作品です。美人だが縁談がまとまらない雪子と男と駆け落ちした奔放な妙子の恋愛模様を中心にストーリーが展開します。

 紹介記事はこちらから。

itsutsuba968.hatenadiary.com

 2位の『潜行三千里』は作戦の神様と呼ばれた大本営参謀・辻政信が戦犯を逃れ、僧侶や医者に成りすましてアジアに潜伏する逃亡記です。指導部の無責任さが非難されることもあれば、スリルがあって冒険ものとして面白いとの評価もある、かなり変わった本です。

 感想記事はこちらから。

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 3位の『風と共に去りぬ』は当時映画が爆発的にヒットした影響で、1949年のランキングでも3位に入っています。今でも映画化・舞台化されることがあって、タイトルを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。あらすじを簡単に説明すると、アメリカ南部の上流階級に生まれたスカーレット・オハラが、南北戦争に翻弄されつつも持ち前の気の強さでたくましく生き抜いていきます。

 紹介記事(ネタバレなし)はこちらから。

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 5位の『帰郷』は欧州を放浪していた元将校が日本に帰郷して、といった話。ちなみに、作者の大佛次郎は「おさらぎじろう」と読みます。

 6位の『チャタレー夫人の恋人』は猥褻文書として発禁処分を受けた作品で、差し止めを巡って最高裁まで争われました。確かに禁止されると読んでみたくなりますよね。

 7位の『きけわだつみのこえ』は学徒出陣で亡くなった学生たちの遺書を集めた遺稿集。

 9位の『裸者と死者』は、メイラーが太平洋戦争に参加した経験をもとに、フィリピンでの日本軍との戦闘をアメリカ視点から描いた小説です。駐留軍として来日したメイラーは後に「日本は私が見た国のうちでもっともうつくしい国でした」と語ったそうです。

 

 1950年のベストセラーは以上のようになります。

 『細雪』のような古典と呼ばれる作品が当時のベストセラーだったのは意外でした。上品な感じの関西弁や細やかな日常の描写が不思議と優しい雰囲気で、現代においても読みやすいと思います。

 全体的には戦争の影響が色濃く残るものの、『風と共に去りぬ』や『チャタレー夫人』が売れているところを見ると、戦時中禁止されていた欧米の作品への欲求があるようにも思います。『細雪』と『風と共に去りぬ』の設定にもなんとなく共通点を感じ、昔を懐かしみつつも新しい時代がやって来たことへの感動みたいなものを感じます。

 特に『風と共に去りぬ』がランクインしているのは興味深いです。戦前の優雅な生活や敗戦の中を生きていく姿などが、長い間戦争に苦しめられてきた当時の日本人には特に共感できたのではないでしょうか。この後日本が経済成長を遂げていくことも考えると、なんとも趣深いです。

 小説としても文句なく面白く、大河ドラマを見ているような人生の追体験ができるのでおすすめです。

 次は10年後の1960年のベストセラーを見てみたいと思います。敗戦のどん底から立ち直った日本ではどんな本が読まれていたのでしょうか。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。