本をめぐる冒険

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『ジェリーフィッシュは凍らない』紹介

 こんにちは。

 本日は市川憂人著『ジェリーフィッシュは凍らない』を紹介したいと思います。

 この作品はミステリーで言うところの、いわゆるクローズドサークルものです。飛行船と言う舞台設定がただ珍しいだけでなく、それを活かした大胆過ぎるトリックには驚かされます。主人公コンビの掛け合いも小気味よく、海外ドラマ風な部分もあります。

 もちろんネタバレなしで紹介します。

 

〇どんな本?

 ミステリー作家・市川憂人のデビュー作で、本作で第26回鮎川哲也賞を受賞しています。

 新しい形の『そして誰もいなくなった』と評されることが多く、本格ミステリー小説としての評価は高いです。

 マリア&漣シリーズは2022年3月現在4巻が刊行されており、本作はその第一作目となります。

〇あらすじは?

 試験運行中の小型飛行船・ジェリーフィッシュが雪山に不時着し、搭乗員6人が全員死体で発見された。不自然な現場の状況、秘密を抱えていた研究室、何かを隠そうとする軍部。マリアと漣は大きな謎に包まれた事件の捜査を開始する。

 

〇ここからが面白い!

 本作はジェリーフィッシュ内で起こった惨劇を描く事件シーンと、その後のマリアと漣による捜査シーンが交互に描かれ、真実に迫っていきます。

 もちろん一番面白いところは最後に大掛かりなトリックが明かされるシーンです。大胆なトリックが巧妙に隠されており、本格ミステリーの面白さ、伏線の緻密さが存分に味わえます。あまり多くは語れませんが、飛行船という舞台設定も巧妙で、まさしく全ての描写に意味がある小説となっています。僕が初めてアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を読んだときもすごく衝撃を受けましたが、確かに本作を読んだときにもそれを思い出しました。

 本作のもう一つの魅力としては、捜査パートの主人公である女刑事のコンビが挙げられます。優秀だがどこか抜けていて憎めないマリアと、優秀だが毒舌で切れ味鋭い漣が、海外ドラマ風の掛け合いをしながら捜査を進めていきます。ミステリーは捜査パートがどうしても地味になりがちですが、読者を飽きさせない工夫がされているところは嬉しいポイントです。マリア&漣シリーズとしてさらに続編が読めるので、気に入った人はぜひ。

 ミステリーファンにも、そうでない人にもオススメできる小説だと思います。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。